MasaichiYaguchi

ガルヴェストンのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ガルヴェストン(2018年製作の映画)
3.6
殺し屋やアウトローと薄幸の少女との物語を描いた作品というと、古くは「レオン」、最近のものでは「ビューティフル・デイ」になるだろうか。
脚本家であるニック・ピゾラットの長編小説デビュー作「逃亡のガルヴェストン」をフランスの女優メラニー・ロランが、エル・ファニングとベン・フォスターのW主演で映画化した本作は、この2人の演技の素晴らしさもさることながら、陽光煌めくガルヴェストンを舞台に繰り広げられる切ない純愛が胸に迫ってくる。
ベン・フォスター演じるロイは肺に重病を抱え、追い討ちを掛けるように組織に裏切られた殺し屋、そしてエル・ファニング演じるロッキーは酷い家庭環境故に娼婦に身をやつしている少女。
社会から切り捨てられ、更に亡き者にしようとする者どもから逃れて2人が辿り着いたのがタイトルにもなっているテキサス州にあるガルヴェストン。
このガルヴェストンはビーチリゾートとして、そしてハリケーン常襲地帯の街として有名で、この街が持つ二面性が本作では遺憾なく発揮されている。
この作品では、中年男と少女、陽光と闇、清と濁という相反するものが背中合わせになっていて、それが物語をより切なくエモーショナルなものにしているような気がする。
そして、先に挙げた「レオン」「ビューティフル・デイ」と同様に、守るべきものが‟一匹狼”に出来た時、その者は一身を投げ出してまでそれを遂行しようとする。
その悲壮なまでの覚悟や行動は、観ている者の心を揺さぶらずにはいられない。
ラストシーンに漂う痛みを覚えるような哀愁が、そのことを思い出させます。