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最高に素晴らしいことのaのレビュー・感想・評価

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
3.3
例えば、心がどうしようもなく不安定になり、悶え苦しむような経験をしたことがない人は、本当の意味で人を救うことは出来ないのだろうか?

責任を背負うことは重荷になる。
現代人は、なるべくなるべくそこから回避しようとする。
でも時々人間はそれさえも背負いたいと願う時がある。
ただ、この時に問題なのは、苦しんでいる人の気持ちをどれだけ分かれるか。だけではない気がする。

私はフィンチが選んだ道を肯定したくない。
正しいとは思わない。
でも、正論がいつも、その人にとって、その時々によって正論とは限らないと知っているからこそ、分からなくなる。

光のある方向もわからないまま、あてもなく闇に包まれた砂漠を歩く。
足を止めたいが、自分がそれを許さない。
時に興奮し、その環境の中でも希望を見出す時もあるが、それはごく稀で、いつのまにかスイッチを持っていないはずなのに、周りの誰も予想しないタイミングで、自分自身でさえも気づかない間に、急降下を始める。
砂漠には穴はあいてなかったはずなのに。
自分でその道を選んだのか、それとも選ばされたのか、いきなり穴があいたのか、分からないけれど急降下し続ける中で、どうすれば戻れるか、戻れやしないのか、あてもなく考える。
時々北極星が見えることもある。
見つけられた時は、元どおり。目を開ければ、闇の砂漠に寝てただけ。
それが見つけられなければ、降下は止まらず、果てまで行ってしまう。
その物事が起きる前に、その手を引っ張れたら良かったのに、振り返らすことが出来れば、踏みとどまらせることが出来れば、とやっぱりそう思ってしまう。

途中までこの映画大好きだった。
エルファニングのお芝居を初めて良いと思えたから。
でも絶妙なタイミングでかかる音楽も、雄大な自然も、全ては心を見えなくするミスリードなんだろうか。
見えるものだけにとらわれすぎて、感情をおざなりにしすぎたのだろうか。

「何に1番恐るか」、ヴァイオレットと私の答えは一緒だった。
この手の映画で「ウォールフラワー」よりも好きになれた作品がまだない。
私も背負える人でありたい、心から。
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