かじドゥンドゥン

孤独なふりした世界でのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)
3.8
人類が滅び、一人生き残った小人症の男デル。彼は毎日、各戸の遺体と遺品を処理しては、玄関先の地面と地図に×印をつけ、作業以外の時間はワイン片手に読書に耽る。もともと孤独だった男が、世界を独り占めして、悠々自適の優雅な生活。

ところが、意外な生き残りグレースが現われ、デルの世界に闖入し、彼からすれば不本意な共同生活が始まる。デルが徐々に心を開き始めたかと思いきや、仲違いがあり、さらには、グレースの両親と称する老夫婦が現われ、デルは混乱、グレースともども拒絶して、再び孤独な生活に引き籠もる。

実は、人類は滅びたわけではない。車を飛ばせば隣町に人はいる。ただ、人々に囲まれたなかでこそ孤独を味わい、耐えかねたデルは、もう人はいない「ことにして」、自分の孤独に言い訳して、折り合いをつけたに過ぎない。この自己欺瞞と対峙したデルは、街を出て、グレースのもとに現われると、血が繋がっていない彼女の記憶と感情を操作して無理矢理「実の子」にしようとしている両親のもとから彼女を連れ出す。こうして、傷つくことを恐れず踏み出してようやく、デルは人と出会った。