マクガフィン

北の桜守のマクガフィンのレビュー・感想・評価

北の桜守(2018年製作の映画)
2.7
戦中から戦後にかけて母と子の30年に渡る軌跡を描いた人間ドラマ。

樺太引揚者・戦死者・復員兵者の立場の違いから起こる戦争の運命に翻弄された悲劇を絡めた激動の時代を生き抜いた親子のプロットはテンコ盛りに。上辺をなぞったような消化不良は否めなく、強引さもあるのだが、現代パートが多いのは好感。

いきなり奇を衒う演劇が登場する。過去パートや内面描写を演劇にしているかと思いきやそうでもなく、ナレーション代わりと時系列でテイストもガラリと変わる構成は如何なものか。一端気持ちをリセットにする役割程度なので演出の統一感が全くなく、終盤の演劇の盛り上がりも伝わりにくい。CGを使うことで現実味が削がれるなら、それこそ舞台演出でも良かったのでは。

如何にも大女優に気を使い過ぎで、品位と若さを高位置でキープする吉永小百合ならではの同じみな演出は好みがわかれるだろう。「母と暮せば」の演技と同じで、視線の焦点が合わないことは、戦争の過去のトラウマを表していると思いきやそうではなくことが気になった。PTSDの後遺症描写も弱すぎで、ただの認知症に感じる演出はプロットの根幹を揺るがす結果に。実年齢に沿った役にもチャレンジしてほしいものだ。何故かアカデミーの主演女優賞にノミネートされると思うが。

戦争の悲劇な過去を思い出すことは、戦争の悲劇を忘れてはいけないメッセージだろうが、血を見せない緩い戦争映画のメソッドは、コンテンツマーケティングが漂い、役者の配役や企画ありきが垣間見れるのが残念で、そんなこんなでエモを振りかざせれて如何とも。

役者の豪華さと熱演で飽きなかったが、次男を家から追い出した年齢と理由が分からないまま終わってしまい消化不良に。鑑賞後に公式サイトで確認したら18歳で家を出たことわかったたが、十代の前半ぐらいで(子役は同じ人で18歳に成長したことは分からなかった)余程の理由があるかと勘違いしていたので、最後までズレた解釈をしたまま鑑賞して、ディテールの咀嚼ができない結果に。