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北の桜守のじゅんPのレビュー・感想・評価

北の桜守(2018年製作の映画)
3.8
何か…新しい扉開いちゃった!!
これもう、ジャンルが「吉永小百合」なんですわ。主演作を観るの初めてなので憶測ではあるんですが、おそらく吉永小百合映画には他の映画とは違うフィクションの線引きルールが存在して、観る側も何ら疑いを持つことなく自動的にその線引きに乗っかって楽しむもののようです。
その領域、絶対不可侵につき。

終戦間際の南樺太。吉永小百合演じるてつは、夫と2人の息子と幸せに暮らしています。冒頭、てつの育てた桜の木が樺太の地で初めて花を咲かせる瞬間をみんなで見てるんですが、つぼみの状態から一気にぐわーって咲いて奇跡が起こった〜みたいなこと言い出すので、宗教映画?って一瞬不安になりますね。

そんな中、ロシアが条約を破棄して攻め込んできたため、てつは子供2人を連れ、戦火を逃れて内地を目指すんですが、この映画ちょいちょい「劇中の人物が本人役で、劇中で起きてることを舞台上で演じる劇中劇」が脈絡なく挟み込まれていきます。…ちゃんと説明できてるか不安ですが、とりあえず船で網走へ。

えー、話は飛び(!?)1971年。てつの次男、修二郎はアメリカで逆玉に乗り、義父の経営するコンビニ「ミネソタ24」の日本1号店を任され北海道に戻ります。演じるのは堺雅人。社員に解雇をチラつかせ、不眠不休で働くよう命じるなど、完全に倍返しされる側の人間に見えますが、社員たちは底知れぬ愛社精神で店の成功に身を捧げます。ふゎ〜ブラックー。ワイフ役は篠原涼子。アメリカでの生活が長かったため(?)、時折ルー語を織り交ぜたランゲージでトークしています。

オープン直後の忙しい折、修二郎の元に一本の電話が。15年振りに母の元を訪れた修二郎は、てつが鏡に映る自分と会話する様を見て自宅に連れ帰ることに。

ここからは家族の記憶と絆をめぐる物語。ミネソタ24で、(主力商品のホットドッグを日本向けにアレンジすることは許さないのに)てつの握ったおにぎりを販売してみたり、ほとんど崖みたいなとこをロープでよじ登って、母子2人で神社にお礼参りに行ったりします。

長くなってきたので割愛しますが、数々の破壊力あるエピソードを経てふたりは何処へ向かうのか。そして観ていれば絶対に気付く、不自然なほどタブー視された話題にはいつどのように切り込むのか!?

(このタイミングでお伝えすべき情報なのかはわかりませんが、今作の脚本を手掛けるのは『デビルマン』の那須真知子。今作含む“北の三部作”すべての脚本を手掛けられているようです…。)

自分のような素人はつい忘れがちになりますが、この映画のジャンルは「吉永小百合」。映画は最終的にストーリーを超えて吉永小百合に回帰し大・団・円!メタ構造のすべてのレイヤーで、吉永小百合は吉永小百合として輝き続けるのです!

とにかく画面上で吹き荒れている感情と、自分の中に湧き上がる感情に齟齬があり過ぎてまったく心の折り合いをつけられないのですが、タモさんに怒られたくはないのでそろそろ黙ります。また次の主演作も観てくれるかな?
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