いちばん好きなのは開店祝いの花を持って帰るシーンかもしれない。あのシーンがはじめにあったから最後まで主人公を嫌いになれない。
この人はこういう性格で、この人とこの人はこんな関係で……みたいなのを伝えようとしてる感のない話のほうが好きなんだけどそんな感じなのが良かった。
「めんどくさい関係はいや」って、付き合うとかめんどくさいって意味かと思ったら逆か? と後半で気づく。いや、あってたか? どっち??
関係に名前をつけた瞬間に死ぬ関係があると思う。関係って言葉も居心地が悪いくらい。だからけっこう観てて居心地が良かった。最後の方も店長とかあの社員?(名前忘れた)とか、「このひとはこう」「このひとたちの関係はこう」ていう枠を作らない感じがあってそれがよかったな。
(最後まで見ると)関係をはっきりさせたいサチコが、なんで主人公を好きなのか(好きなのかもわからんけど、なんか反応を求めてる感じがあったからそうだと仮定して)疑問だった(Tシャツとか、わりと序盤からさちこはしずおが好きなん?? ってシーンあったからそもそもずっと好きじゃなかった可能性もあるけどそれも一旦置いといて)。けど、つーかそもそも好きに理由とかないかもしれないけど、恋愛下手のあたいががんばって考察してみたところ、彼が空洞だからかと思った。そういえば彼は名前すらでてこない。その場のノリでセックスしようとかバイトサボろうとか殴りてえとかあってもその奥は見えない。なにもないのかもしれない。だからこそその空洞をうめたいとか、なにかあるならそれを知りたいとか、空っぽだから楽ってこともあるかもしれないし。でも空洞とつきあいつづけるのはしんどくなってくるのか。最後、空洞が埋まる。なんか考えすぎな気がしてきた。最近妙に坂口安吾が頭にひっついてて(そんなに読んでないのに)いまも『私は海をだきしめていたい』思い出しながら書いてた。関係ないですよ。空洞というより紙一枚、みたいな感じかも。他人に嘘はついても自分に嘘はつかない感じの人ってなかなかいないし結構いいよね。サチコがしずおと付き合うって話したあと、主人公の「今度はしずおを通して新しくサチコを感じることができる、そうしたら僕は気持ちの良い空気のような男になれる」(うろ覚え)ていうモノローグが良かった。良かったけど、どういうこと? でも、あたいは人といわゆる良い雰囲気になると逃げる癖があるせいで(あとハッピーマニアなせいで)いまのところ恋愛とほぼ無縁の人生を送ってるので、なんかわかる気がする。恋人とか、名前のある関係に縛られたくないし。ずっと同じ人といっしょにいるとみぞみぞしてきそうだし。まあこうやって観客が登場人物の関係とか人柄とかダラダラかちっと分析したりできないところが良かったね(ふりだしにもどる)。