櫻子の勝手にシネマ

マザー!の櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
3.5
2018年2月に日本で公開される予定が中止となった問題作。
人間の醜さ、環境破壊、聖書をモチーフにした本作は、予備知識がない状態で視聴しても困惑するばかりで、意味不明と感じるかもしれない。

個人的には幼い頃日曜学校に通っていたことがあるので(クリスチャンではない)、聖書は自宅の本棚にあり、一応読破している。
なので、医者(エド・ハリス)と医者の妻(ミシェル・ファイファー)が登場したあたりから「もしやアダムとイヴでは?ということは旧約聖書(創世記)?」と、なんとなく予測できた。

本作は極めて宗教的作品で、夫(ハビエル・バルデム)は創造主であり神、妻(ジェニファー・ローレンス)は母なる大地である地球を指している。
夫は詩人であるがスランプで書けなくなっている。
妻は家事と家の修復に勤しんでいる。

最初の訪問者である夫婦(アダムとイヴ)。
アダムの脇腹には大きな傷があり、アダムの助骨からイヴが作られた話を表現していると推測できる。
因みに、2人の子供グリーソン兄弟はカインとアベル、生まれた息子はメシア(キリスト)、家に入ってくる人間たちは信仰者だ。

旧約聖書の流れをなぞりながら、母なる女性(大地、地球)に人間たちが心理的な抑圧と肉体的な暴行をひたすら加える超絶胸糞映画…と感じる人が大半だろう。
一緒に観た夫も「この胸糞旦那!お前が死ね!」と画面に向かってエキサイトしていた(笑)

禁断の果実によって知恵を手に入れた人間の文化が、自然や世界、地球を蹂躙し尽くす蛮行を、ひとりの女性に対する虐待という形で表現していると解釈できる本作。
ラストは夫が焼け焦げた妻から『愛(結晶)』を取り出し、書斎の台座に飾ることで家が再生され、寝室のベッドで妻(ジェニファーローレンスとは別の女性)が目を覚ます。
これは、神が再び天地創造をやり直すことの暗喩だろう。
まぁ、何度繰り返しても同じ結果にしかならないのだが(笑)