ヤマダ

ハウス・ジャック・ビルトのヤマダのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.9
自分の事が大好きで、大嫌いなトリアーが劇中人物を通して赤裸々に自身にあるもの(人が持つ普遍的なものだが)を客観的に分析、内省してみせるので、あれこの人ちょっと丸くなった?と思わされるも結局は全然そんな事も無く、どこまでも露悪家な人なんだな、と笑いながら再認識した。ラース・フォン・トリアーは全く懲りていない。
まず、この映画は音が最高だった。特にある場面で絶えず鳴り響くあの新鮮で恐ろしい音は強烈に印象に残る。
一方で、倫理が芸術を殺す、そんな事は糞だというその言い分には僅かに共感を覚えつつも、その挑発的な画造りも含めて全体的にちょっと狙い過ぎ感が目立ち、作品のテンションに対しては冷ややかな気持ちになった。また長尺からの後半の怒涛のスロー演出には気が狂いそうにもなった。
だだ、内容の善し悪しや出来不出来とは全くの別として、この唯一性を否定する気は無いし、トリアーがこれまでの自分の作品を空虚なものと心のどこかで捉えているとしたら、それは嫌だなぁと、断じてそんなことは無いぞと、肩を叩きたい。その必要は全く無さそうだけども。
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