フェーイム!!!!!
殺人鬼ジャックの深き深き闇へと潜る2時間半。
倫理観を一線また一線と飛び越えていく様が最初はとても痛快に映るし、実際に笑い所もあったり。
でもそう思えるのは表面的な行動だからこそであって、ジャックの内側まで見え始めてからはどんどんと深みに嵌められていく「笑えない」感覚。
そう、犯罪自体のグロテスクぶりよりも、シリアルキラー・ジャックの深層心理へとどんどんと深く深く潜航していくことがこの作品の妙なのだ。
それはもう「映画は映画」とちゃんと思って臨まないと到底受け入れられない描写だった。そう思わせた章で更にヤバいことをやってのけるのはもう「流石」だなとしか。
でも一方で「シリアルキラーの心情を綴るのであればそれくらいの覚悟を持たないとだろ」というLVTの作品に対する誠実さもまた感じる。
そしてその「受け入れがたい描写」の時から、最初のジャックからどんどんかけ離れていくのも印象的だった。
所々に監督自身の信条も垣間見えたりしたりしてメタ的なスリリングさすら。
シリアルキラーを色モノと規定してファニーに描いて「グロいっとく?」、みたいなのじゃなくて、「本気でシリアルキラーの気持ちを分かろうとする」スタンスで、グロはそのうちの過程でしかないからこそ、尋常じゃなくヤバイのだ。
場内に残った観客全てを「向こう側」へと連れて行く、「ゾッとするほど魅力的」な危険すぎる作品。