chiakihayashi

ゆれる人魚のchiakihayashiのネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

198X年、共産主義時代のポーランドを舞台に、人魚の姉妹が陸に上がり、見世物小屋ならぬナイトクラブでスターになるが・・・というホラーファンタジー。ヒロイン2人は人魚でしかも肉食、人間の男に恋をした姉がけなげに人間になりたいと脚の移植手術を受ければ、妹の方は怒りにまかせて男たちを襲い・・・とメタファーてんこ盛り。これはキッチュなミュージカル仕立てにでもしないと到底収まらなかっただろう。私は早々と理解することをあきらめて半ばボーゼンと見ていたのだけれど、見終わった後に、それにしても古今東西、若い女性への抑圧の深いことよ、とため息をついたのだった。

批評的に見ればひとつだけ明らかなのは、姉はフェアレディ(金髪で純情、貞淑なあらまほしき女性像)であり、妹はダークレディ(黒髪で性的に奔放な悪女)という分析概念に当てはまる。言い換えれば、姉妹が象徴するのはひとりの女性が持つ2面性だとも言えるし、まさに古今東西の物語で繰り返し語られ、造型されてきた女性幻想でもあるということ。

そして、この映画は女性監督によるその新しい語り直しの試みなのだ。
chiakihayashi

chiakihayashi