KATO

ゆれる人魚のKATOのネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ホラーなんて一言ではいえない。期待した通り良作だった。
北欧系の映画ってこれだからやめられない。好きだ。

二人の人魚の姉妹。人間を愛してしまったシルバーに、人間のことはただの食糧(もしくは利用すべき存在)としかみていないゴールデン。
この二人が美人すぎないのも良い。どことなくチャーミングで、笑うと魅力がぐっと増してます。それに、背景の色も相まってゾッとする。

人間って、とても都合のよい生き物なのだなーと。異類婚姻譚とかは昔からあるが、人魚姫はその一歩手前ですよね。童話の人魚姫の王子は、人魚を女として愛さなかったことがとても救いだと思った。
今回は、バリバリ女として扱っていて、自分たちの世界まで引っ張りだしているのに、責任はとらない。排水溝に流れていくシルバーの鱗が悲しくて、彼は彼女が血を流してまでくれた、字の通り身を削ってまでくれたプレゼントを大事にしていたこともあったのだろうに、と泣けてきた。
シルバーはそのことに対して、愛した人が出した結果だからと受け入れるけれど、本当にそんなことが許されるの?責任なんて問いてしまったら愛がないといわれるんだろうか。愛は欲望や本能にしか順じないものなのだろうか。
ラストの10分がとても美しかった。人間に代わってからの色彩は明るくて、観ていて幸せになった。本編の憂鬱さと相まって、最高だー。
殺さなくてはならないのに、殺せない。別にいいのよ、というような諦めた微笑みが良かった。泡になる前の一瞬、たぶん一番美しいシルバーの姿だった。
大切な家族を失ったゴールデンの怒りは大きいだろう。私は、ざまーみろと思ったし。でも、きっと彼女は敵をとっても全く満たされないんだろうなあ。大切な存在を失った彼女は、どんなふうにこれから生きているのだろうか。
寂しくて、幻想的な、愛を訴えかけられた映画。作中に登場する音楽は、どれも作品の雰囲気にマッチしていて素敵でした。大変好み。
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