ジョー

ビブリア古書堂の事件手帖のジョーのレビュー・感想・評価

ビブリア古書堂の事件手帖(2018年製作の映画)
3.6
 太宰治の『晩年』と夏目漱石の『それから』。本作のメインディッシュ。
「死のうと思っていた。・・・夏まで生きようと思った」 鮮やかに記憶が戻る『晩年』の冒頭。『それから』が不倫の話だとは僕の記憶には残っていなかった。

 『晩年』の初版本を巡って事件は起こり、『それから』の不倫劇が主人公の祖母の隠された秘密に繋がる。
 謎めいた北鎌倉の古本屋を舞台に文豪の2作が独り歩きをしていく。
 初版本の価値と不倫の普遍性。時を経ても色褪せないもの同士が映像を支配する。
 三島由紀子監督の映像は、いつも光の加減がいい。
 古本屋の仄かな光が、書店主の黒木華を際立たせている。
 祖母夫婦が営んでいた食堂の光の加減も絶妙。食堂名物のかつ丼がとてもおいしく見える。
 
 金田一耕助の世界に迷い込んだような錯覚。そんな錯覚もかえってうれしい。
 『晩年』と『それから』を読んでいないと、ちょっとぴんとこなかったりするので、ご注意を。
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