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ヘルタースケルターのtakuのレビュー・感想・評価

ヘルタースケルター(2012年製作の映画)
3.4
岡崎京子ではなくキューブリック。でもなく実は蜷川実花。

なんていうか、岡崎京子の世界観ではないよね。

たしかに、ビビットカラー系の世界観であることは間違いないんだよ。でも赤紫じゃない!!

朝日!パステルカラー!渋谷系!こいつらを上手いこと混ぜたのが岡崎京子なんだよ、
赤ビビットでクラシックはもう「時計仕掛け」じゃねぇか、、、

リリコは作中からも読み取れるように、時代の洗礼を受け続け、消費されていく商品としての自分に対して、大きな危機感を覚えていた。一過性の美を望んだにも関わらず、永遠に人々の美の対象として崇め奉られることを望んだ。
果たして目的は達成された。
記者会見での言動により、リリコは伝説と成りえたのである。

同様に、主演の沢尻エリカも伝説になった。
この作品を通して、お嬢様キャラのイメージを払拭し、演技派としての才能を開花させた。
そして、近年の大スキャンダルにより、芸能界を追われたものの、消費のレールから抜け出し、伝説となった。

カルチャーとは消費が激しいものである。日々、生み出され、消費され、消えていく。そうして残ったものが真のカルチャーになりうる。

前述のように、蜷川実花は、原作へのリスペクトからか原作者の世界観を保とうとした。しかし、彼女自身の作家性をも保とうとしたばかりに、岡崎京子とケンカした。

岡崎京子は、世界観に作家性を求めた作家である。あの独特の余白がある空気感。暗い緊迫した話にも関わらず、パステルカラーのやんわりとした空気感。それが岡崎京子の良さである。
にも関わらず、蜷川実花は、彼女から空気感を奪い去り、自分の世界観を接着させた。

吉と出るか、凶と出るか、、

凶が出た。

化学反応は起きなかった。両方の長所のみを潰しあった。伝説にはなれなかった。

伝説になったリリコと沢尻エリカ。伝説になれなかった蜷川実花。

真のカルチャーになった前者となれなかった後者。

今後、何がしかのドラマを生み出して、真のカルチャーへと昇華する蜷川実花を切に願う。
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