mai

ヘルタースケルターのmaiのレビュー・感想・評価

ヘルタースケルター(2012年製作の映画)
2.4
なんというか…めちゃくちゃ綺麗に作られた沢尻エリカのPVを観てる気分になります。

原作(というか岡崎京子さん)が凄く好きで観ました。原作の雰囲気はまんまで、その世界観に蜷川実花さんの作り出す映像はピッタリとマッチしていました。ドギツイ原色だらけの画面は結構人を選びそうですが、観ていてドキドキしてしまいそうになる出来でした。そして、沢尻エリカさんは本当に綺麗ですよね…原作では最強に美しい・リリコという設定で、ある意味そこまでのカリスマ性だったり美しさを再現するのって難しいはずなのですが、そこをやれてしまう沢尻エリカさんは凄すぎます。そして、絶妙なまでの彼女の「作られた感」の演技。リリコは本当に生身の人間なんかじゃなくて、まるで人形のような美しさで、その存在感さえも作り物のようでした。
ただ、ストーリーの展開としてはうーんという感じです。なぜ原作が好きなのかといえば、岡崎京子さんの「女の子」の描き方が好きだからです。性を織り交ぜながら、自分とは…と渇望する大人のほんの少し手前の少女を描くことに関して、岡崎京子さんの右に出る人はそうそういないように思います。しかし、この映画はどこかリリコのうわべだけを切り取ったみたいな感じで、彼女の憔悴や動転ぶりを写すことで内面に迫るのか…!と思わせておいて、すぐにそこらへんに転がる原色でギラギラの薬や家具にカメラを移す。
確かに原作にはかなり忠実ですが、これだと「狂った女リリコ」の映画になってしまいます。そうではなくて、「リリコは狂ってるけれど、誰しも美や賞賛、愛に対して飢えていて、彼女の渇望は実は普遍的なものなのだ」的な感じのところを、もう少し丁寧に描いて欲しかったなと思います。そこの「自分にも…」という不安感がこの作品の鑑賞後の後味の悪さになるべきで、そうでないと最後のバーでの部分もまるで取ってつけたようなシーンになってしまいます…。あそこのシーンの解釈として、私は「美や若さへの渇望といった狂気は消えずに、どこかに潜んでる」だと思ってます。そして、また別の誰かがその狂気の蓋を開けてしまうのです。

キャストも世界観も素晴らしいだけに、PVのような「綺麗」で完結してしまうようなストーリー展開になっているのが惜しいように思います。
mai

mai