ブラックユーモアホフマン

楳図かずお恐怖劇場 蟲たちの家のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

4.4
面白え〜〜
そもそも原作がよくできてるのだと思うのだけど。「くだんのはは」や『呪怨』にも通ずる、“二階の奥の部屋に異形のものがいる”という想像力と、カフカの『変身』を結び付けて、夫婦の愛を描く。

黒沢さんは『スパイの妻』で野原さん、濱口さんの脚本を読んだとき、「これは自分には発想できない」と思ったらしいが、夫婦の壮絶な愛の物語という点に関しては今まで何度もやってきてるじゃないかと思った。
『降霊』や『叫』、『リアル 完全なる首長竜の日』『岸辺の旅』『クリーピー 偽りの隣人』『散歩する侵略者』『予兆 散歩する侵略者』など、どれもそう。

ある決定的な瞬間に居合わせた三者には三様の現実があって、そのそれぞれは矛盾しているのに干渉せず共存しているという。でもそれこそがこの世界そのものなんじゃないかという気がする。どれが絶対的な事実かなんてどうでもいいし、そんなものはない。それを時系列の往復などを巧みに使って表現している。

カメラワークや編集、西島さんのヤバい演技など含めて、同年公開の『LOFT』の実験をしているように思う。
黒沢演出は、通常の映画的生理感覚を絶妙にズラすのが上手いんだよなあ〜。面白いなあ〜〜。

【一番好きなシーン】
あの家には異様な妖気が溢れていて扉も勝手に閉まる。変なはずなのに妙な説得力があって全く不思議に思わない。