ゆずきよ

空飛ぶタイヤのゆずきよのレビュー・感想・評価

空飛ぶタイヤ(2018年製作の映画)
4.2
前情報無く軽い気持ちで観始めました。
なんだったら町工場のお仕事ドラマな雰囲気かな?空飛ぶタイヤって事は飛行機の着陸タイヤかな?みたいな感じで。

物語は、経営がギリギリの運送会社社長の長瀬智也の元に一本の電話が入る。自身の会社の社員がトラックで事故を起こしたとの事、被害者は飛んで来たタイヤで即死したとの連絡だった。
この時点で思っていたのと全然違いました。
そのギャップに思わず口元まで運んだ午後の紅茶を飲まずに机に置いたほどです。
そんで前半ずっと苦しい。
あまりの息苦しさに何分経った?と確認するとまだ20分かい。
これどうやって事態は好転するのだろうと思っていたらどうやら事故は長瀬智也の会社のせいでは無いぞという所から風向きが変わります。
事故原因を調査した販売元の会社に勤めるディーン・フジオカとムロツヨシの片仮名コンビがキーマンです。
当然販売元の会社は自分達が悪いとは認めません。
概ね長瀬智也視点とディーン・フジオカ視点で物語が進みます。
ポスタービジュアルだと高橋一生もメインの描かれ方していますが出番は控えめ。
私としては被害者側である視点をもっと見せて欲しい気もしましたが、とにかく浅利陽介が良い。
あんなん泣くって。
その後に後詰で襲ってくる手紙。
勝手にだけど一周忌とかで浅利陽介がハンバーグ作って「ママのとはやっぱり違うな」というところまで想像してしまいました。(※本編にそんなシーンはありません)
真相は解明されていくもやっぱり汚ないよ大人は。
悪い事したらごめんなさいを言うんだよっておばあちゃんから教わって無いのかしら。
最終的には報いを受けるのだけれど過去に戻れるわけでは無いから完全にスッキリとさせて来ないところが逆に良き。
だって被害者は還らないからね。

原作は未読なので描かれ方はわかりませんがこれは実話を元にした話だそうです。
現実は小説や映画の様にはいかず、物事が解決した時には運送会社は倒産していたとの事。
今作では描かれていませんでしたが酷い誹謗中傷があったとの事でした。
被害者側も辛い戦いを強いられた事と思います。
私達はどうしても物事の側面しか見る事が出来ず画面の中が真実だと思ってしまいがち。
その中には多くの陰謀や隠された事実があってきっと消された真実があるんだろうなと。
この映画がその人達の救いになるなんてそんな何の足しにもならない事は思わないけれど、せめて物語の中だけでも救いのある世界で良かったと、そう感じました。
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