YohKitajima

ワイルド・スピード/ファイヤーブーストのYohKitajimaのレビュー・感想・評価

4.6
1番最初の方くらいに出てた『ファイヤーブースト』の宣伝ポスターの、憂いを含んだ聖母みたいな表情をしたヴィンディーゼルの異様な暑苦しさを見て、本編では絶対にこの表情だけは見せて欲しくないと思った。いざ蓋を開ければ数秒に一回くらいはこの表情をしてた。中性子爆弾が爆発し、車が炎上して炎の中を走り抜けるようなシリーズ屈指の暑苦しさを誇る本作の中でも、その表情の暑苦しさは埋もれていなかった。

冒頭から路上で10歳のガキにドリフトさせて親子の交流ぶってるヴィン・ディーゼルが出てきて、『シティオブゴッド』思い出した。次作ではあのガキが元気に人の頭に銃弾打ち込んでたりしたらいいな。初っ端からこういう倫理観を提示してくるから、全編何やられても嫌悪感は湧かずに受け入れることができる。あまりに受け入れ難い事態ばかり起こるけど。

5分に一回くらいのペースで場所移動するし、それに伴って地名が異様な頻度でデカい文字でバーンと出てくるのは笑った。場所移動多すぎて途中から面倒になったのか文字が出てこなくなったのは笑ったし、後でまた復活したのも笑った。文字ですら情緖不安定。

ローマのくだりはめっちゃIQ2のノーラン映画みたいだった。ジョーカーみたいなやつとカーチェイスしてトラックが縦回転するのとか、荷台にある球状の中性子爆弾を頑張って水場に運ぶのとか。ガンガンぶつけても爆発しないし。

途中秘密組織の男が「車一台で全てが解決できる時代は終わった」みたいなことを言っていたが、まずそんな時代があったことを素直に認めないで欲しい。

毎度のことながらステイサムが可愛かった。3秒以上人の話をじっと聞いていられないので、助けを求めてきたサン・カンに「死者の訪問は、いつだって復讐だと決まってる!」と逆ギレして拳を打ち込み、「俺のママが危ねえ」とパジャマみたいな格好で沢山の武器を車に積んで颯爽と出ていった。あわてんぼうのサンタクロースやね。

脈絡もなくトリップしたと思ったら何事もなかったかのように普通に会話してるサン・カンなど、理解し難い展開はたくさんあったものの、なぜか幸せな気持ちで映画館を後にすることができたな。楽しかった。
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