トッシマー

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のトッシマーのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

 第二次世界大戦勃発直後、チャーチルが首相に就任し、宥和と戦争の間の板挟みに苦悩する映画です。

チャーチルは主人公ですが、すばらしい、高潔な人物として描かれません。癇癪持ちで飲んだくれ、金持ちで世間知らずの傲慢な変わり者として描かれます。首相に任命された時も、野党に支持を得られる唯一の人物だという理由のみで選ばれており、任命する王も嫌々やっています。元首相のチェンバレンも、チャーチルが就任すると早々に、蹴落とす計画を立てています。
 
 チャーチルは、ドイツと講和することで、イギリスがファシストに支配されることを恐れて、戦争の継続を試みます。ユダヤ人虐殺の事実から考えると、チャーチルの懸念は全うです。しかし、戦争はほぼ負けに近く、同盟国のフランス、ベルギーも早々に降伏しています。負け戦は確定、チャーチルの周りの政治家たちは、無意味に戦争を継続せず、戦争の講和をチャーチルに勧め、いたずらに戦死者を増やすチャーチルに反感を覚えています。チャーチル自身も、宥和と戦争、どちらを選択すればいいかわからなくなってきます。

 そのチャーチルを後押ししたのは、元々戦争に反対していた王です。心境が変化し、チャーチルが行うすべてを支援すると宣言します。私は、この王の心境の変化がなぜ起こったのかがわかりませんでした。

 その後、チャーチルは電車内で市民に戦争の継続の是非を問い、戦争の継続が支持されていることを知り、それを大臣たちに発表します。しかし、チャーチルが意見を聞いたのはあくまで、電車の一車両に乗っていた市民たちであり、それを民意のように語るのはどうなのか?と細かいことを考えてしまいました。その後、チェンバレンはチャーチルの演説を聞き、チャーチルの意見に賛同、戦争反対派までもチャーチルは味方に巻き込み、国は一丸になり、ファシストへの反抗を決めます。ここでも、何故チェンバレンは心境を変化させたのか、これも私はわかりませんでした。その後、チャーチルは言葉の力で状況を変えた、と言及されるシーンがありました。しかし、最初から一貫して、「チャーチルは想像力は豊かであるが、現実味がないことを言う人物」であるというふうに受け取っていたために、チャーチルの妄想に人々が乗せられているふうにしか見えませんでした。チャーチルのキャラクター自体は大好きでしたので、その点ひっかかって残念です。
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