冒頭のカットでこの映画は、綺麗事ではないことを観客に宣言して見せる。
原作があるとはいえ、広島を舞台としたヤクザ映画といえば、既に深作欣二監督の「仁義なき戦い」という大傑作映画があるだけに、作り手としてはそれなりの覚悟を持って挑んだに違いない。
「仁義なき戦い」や「アウトレイジ」がシリーズ通して、ヤクザ同士の抗争を描いているのに対して、こちらは警察対ヤクザの話。
勢力拡大の為、非道の限りを尽くすヤクザ組織に対して、警察側も負けてはいない。
役所広司演じるマル暴のベテラン刑事は、ヤクザも一目置く、裏社会に通じるアウトロー。
この疑惑まみれの汚職刑事とバディを組むのは、一流大学を出たエリート新米刑事の松坂桃李。
激しいアクションに目が行きがちだが、この二人の刑事を中心とした、人間ドラマが見どころとなる。
役所広司が上手いのは、相変わらずだが、正義感あふれる新人刑事が、徐々に灰色に染まっていく過程を松坂桃李が見事に演じた。
この映画をきっかけに、並み居る若手俳優たちから頭ひとつ抜け出した感がある。
深作映画や北野映画にも負けないバイオレンス描写で、刑事・ヤクザ・女たちの生き様を描き出したハードボイルド映画の傑作‼︎
監督・役者の熱量が、スクリーンから伝わってきた。
2019年3月に劇場で鑑賞した作品を動画配信にて再度視聴。