孤狼の血のぺんのネタバレレビュー・内容・結末

原作既読。面白かった。でも原作を読んでいなかったら、もっと素直に楽しめたことを念頭に置きます。

バイオレンスシーンは白石監督らしい思い切りの良さが見応えあり。
でも思ったより大人しめ？血はたくさん出るが狂気的な暴力演出は多くなくそれほど怖くない。
役者たちの暑苦しさや切れっぷり、息詰まる話の運びにはドキドキしてしまう。
映画としては、時系列を上手く組み替えて原作をまとめた印象ですんなり見やすくなっている。
ただダイジェスト感が強くて説明不足な部分も多少はある。

以下、個人的に原作と比べて引っかかる点。
大上は、あまり今の役所広司のイメージじゃないかな。『シャブ極道』のときはもっと狂ってたけど…
日岡の松坂桃李もシャープにかっこ良すぎて。2人とも演技は良かった。
しかし背景や脇役たちの佇まいには昭和を感じても、主役2人は現代色が強く見える。
また大上の過去が省かれているのはもったいなかった。

女性陣について。
オリジナルキャラを演じる阿部純子は実写化に伴って若い女っ気を増やさなきゃ、という商業的な意図を感じてやや冷める。
可愛いし、役割もあって安心しましたが、別に居なくてもいいんだよな。
梨子の役柄改変も上手いし、場面を小ぢんまりした小料理屋からクラブへ変更したのも、絵面的に華やかではあるけど。
彼女は大上と『秘密』を共有する間柄だが、彼女から大上の過去が語られないこと、
彼女が若いヤクザと関係していることもあって、いまいちその絆が弱く見える。

対して、タバコ屋の婆ちゃんの出番がワンシーンのみなのが残念。原作では割と心温まる交流だったんだけどな。
例のジッポも印象が薄い。狼より豚ばかり思い出しちゃうし。

ぐだぐだ言ってしまったけど、好きな改変は日岡の報告書。松坂桃李の涙や芯の強さを見せる姿は胸にくる。