ouch128

29歳問題のouch128のネタバレレビュー・内容・結末

29歳問題(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2019.08.11

自分も30歳に近づくにつれて、その世代に対して色々と感じるところがあり、何か指針を見つけたいと思って、タイトルに惹かれて鑑賞した。観てみると確かに、30歳は人生においてのターニングポイントだということが非常に強調されている。特に女性は結婚や出産といった大きな転機を否が応でも意識せざるを得ない年代。序盤のバスのシーンでは、30歳というひとつの指標が、先進国においては非常に身近で重い問題なのだということが、ユーモラスで皮肉たっぷりに描かれている(みんなあんなに見ず知らずの男に保険パンフもらう?)。

ただし、中盤からティンロが登場することで、本当に重要な「自分の好きなことをちゃんと見つめること、考えること」、「どの年齢でも初めはゼロからのスタートであって、挑戦を臆してはならない」といった姿勢は、どの世代にももれなく当てはまるのだという作り手の強いメッセージを受け取ることができる。だからこそティンロに、終盤に友達以上恋人未満の男に変な迫り方をさせる(病に冒されていることはさておき、広く捉えるとこの言動はまさに挑戦)し、ヨックワンに悪態をつくモデル(大して可愛くなかったな)に、罵倒する場面を妄想させる(実際には行動に起こさなかったが、ここもある種の挑戦と言えよう)。そこでは実際は物腰柔らかに応対しているが、ティンロ家に借住まう以前ならあんなことにはならずに、クールに何事もなく対処していたはず。そのあたりの「自分はこうしたい」といった欲求や願望が、中途半端に年齢を重ねた30歳という年代では、うまく発信できないのだろう。そういう葛藤が非常に手に取るようにわかったのは、やっぱり自分も30歳が近づいてきたからなのだろうか。

あと、ヨックワンが中盤〜終盤にかけて自分の依存体質に気づく描写がある。仕事に依存し、プライドに依存し、恋人に依存するその体質は、結構現代人はみんな持ち合わせているものであって、そこをちゃんと描写する映画は意外と少ないような気がする。することがなくなって絶望するというシーンは、あてはまる人が多いのにみんな触れないようにしている感じがする。そこで自分を振り返ると、けっこうヨックワン側にいて、なんだかなぁとも思う。

2019.08.20 追記
ふと30歳なんて平均寿命を考えたら全然大したことないのでは?と思った。「30歳過ぎた女性」という概念がそもそも旧時代的であって、だからこそ現実とのギャップに主人公は苛まれていた訳で。その概念を自分の中で崩せたとき=ティンロとの邂逅を果たせたとき、本当の人生が始まるということを、この映画では言いたかったのではないかなあ、と思う。
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