やまちゅう

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生のやまちゅうのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

夢とリアル?

全体を通して「うまくいきすぎている場面」と「リアルすぎる場面」があるなと感じた。

前者について。周りの人物に恵まれ過ぎている。友好的、かつ障害者だからといって優しすぎない陽キャ、理解のある元医者。そういった「仲良くなるきっかけ」や「専門的な背景」が揃っていて、主人公のサポートが出来る人物がそろっていた。

後者について。最後ホテルではなく、友人のレストランで働くことにしたこと。正直、あの瞬間に映画の見え方が変わった。主人公は意地でも夢を貫き通す人間ではなく、自分の夢の一部を叶える&実力だけは示すという、現実的な範囲での挑戦にとどまった。大きな障害を抱えてもなおそれまで一切迷いを見せなかった主人公のこの決断には、一見「どうした?」と感じたが、思えば彼が結婚式で大事故を起こし、入院し、恋人に嫌われた時に、「この選択肢は違った」と飲み込んだ背景があったのではないだろうか。

つまり、この物語は前半と後半で主人公は変化した。
「大きな障壁を抱えながら夢に突き進む主人公」から
「最初に描いた理想ではないが、理想を部分的には叶えた人物」となった。

実際に全身全霊で夢に挑戦した結果、そこで痛感した代償を支払う意義がないことに気づいた、ともいえる。映画というコンテンツとしては少し味気ない結末と感じてしまうかもしれないが、実際に自分の指を切ったり、他人の結婚式を台無しにしたり、上司に理不尽に怒られたり、恋人に見限られるリスクを、これからも何度も冒してでもその”理想”を盲信するのであれば、それは果たして夢や理想と言えるのか。本気で挑戦した主人公だからこそ、自分なりの落としどころを見つけられたのではないかと感じた。
やまちゅう

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