caramel

ファースト・マンのcaramelのネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

決して派手な映画じゃないし、
チャゼルが描くとどうしてもドラマチックにはなりきらない。
そこが好きな映画だった。

宇宙、って言えばなんだか夢を感じるけれど、結局は軍事事業だし、
この(映画で描かれる)時代はいまよりもずっとそれがシビア。
他国の成功にキリキリと宇宙飛行士たちが悔しがるくらいに。
そんな国単位のプロジェクトに、帰還できない可能性込みで人生を捧げるなんて..
チャゼルはなぜいまこれを描いたのか。

ちゃんと調べたりしていないので確かなものはないけれど、
エンドロールにエグゼクティブ・プロデューサー、スピルバーグの名前を見つけたときになんとなく「はーん」と思うものがあった。

しかしもって「ファースト・マン」というタイトルが秀逸だと思った。
月面に人類で初めて降りたったのはたしかにニール・アームストロングだけれど、
初めてそのことに挑戦したのは彼じゃない。そういう意味の「ファースト・マン」、開拓者ではない。

ただ、挑戦と失敗を繰り返し、その歴史と、犠牲になった人々を背負っての彼の月面での一歩を思うと、やはりものすごいことだ。

宇宙船って、スターウォーズみたいな環境でさえ窮屈に思っていたけど、最初は宇宙遊泳なんてこともできないくらい、がっちりベルトで固定されるしかない空間だったんだよな、って結構驚きます。

ライアン・ゴズリングはいつになく「薄め」?の低空飛行な演技が良い。
ニールの奥さん役のクレア・フォイが芯の強く穏やかで賢い女性像をきっちり描いていて好感を持ちました。
彼女の静かな感情の動きと目の表情が、
さらに無感情なニールの想いさえも補うような表現で「ふたりで」演じている感じ、ベタベタしないけれど、強く繋がっている夫婦がとても良かった。
それだけにふたりがガラス越しに指を重ねるラストシーンはそこに持っていくのか!とちょっとやられてしまいました(いい意味)

デミアン・チャゼルと言う人は不思議な表現力を持つ人ですね。
なぜ彼の作品を見終わると、妙なもやもやが残るの笑 それも毎回違うタイプの気持ち悪さで、どうにも慣れない。

「ファースト・マン」も、結構後味スッキリとはいかないんですが、
「ラ・ラ・ランド」をバッドエンドと捉えた人たちにとったらこの映画ってどんな位置づけなのか気になるな。
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