福井康之

ファースト・マンの福井康之のレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.8
まずはじめに…アポロ計画のこととかは有名なので知ってましたけど、僕は賢いほうではないので、詳しいことは何も知りませんでした。テレビ番組とかで月面着陸の映像みたいなのを見た記憶はあるし、有名なセリフも聞いたことがありますが、この映画はそこに至るまでのニール宇宙飛行士の伝記であり、それを見事に監督が映像によって敬愛の意を表したものだと思った。

1961年
空軍でテストパイロットを務めていたニール・アームストロングには重い病と闘っていた幼い娘がいたが、願いかなわずカレンは逝ってしまう

「別の地点に立つと見方が変わるんです。」

1962年
娘を喪った哀しみから逃れるようにNASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募し、見事に選ばれたニールは妻ジャネットと長男ニックを連れてヒューストンへ引っ越し、有人宇宙センターで訓練や講義を受ける

「気絶する前にマシンを安定させることを学ぶ。」

飛行士が母船から小型船に移り月に着陸、任務終了後に母船とドッキングして地球へと帰るが、この2機のドッキングができることを実証するのがジェミニ計画

「宇宙開発競争において、またもソ連が勝利しました。」

1966年
軍人ばかりの飛行士のなかで互いに民間人だったエリオットとはすぐに打ち解けたが、ニールがジェミニ8号の船長として史上初のドッキングミッションを命じられたとき、任務から外されていたエリオットが訓練機の墜落事故で命を落とす

「彼は娘の話をした?」

ニールもドッキングを成功させ喜んでいたのも束の間、ジェミニ8号は回転が止まらなくなり制御不能の危機に陥るが、ニールの冷静な判断により無事帰還する

「規定や手順で"管理している"と思うだけ、模型が好きな男の子と同じよ!何一つ管理下にない!」

NASAは人命の危機を晒したことでメディアから莫大な費用を無駄にしているとたたかれるが、調査委員会はニールの功績を認めアポロ計画へ移行、パイロットにはニール家の向かいに住み家族ぐるみで仲の良かったエドが選ばれる

「息子の視野が広がっていく…自分に自信がもてる。」

1967年
ニールがホワイトハウスのパーティに出席していたとき、エドと2人の乗組員がアポロの内部電源テストの最中に火災が発生し、3人が亡くなったことを知らされる

「今、失敗すべきだ、月で失敗しないために。」
「犠牲を払ってでもか?」
「犠牲を払って?その質問は遅すぎます。」

1969年
世間からの非難を浴びる真っ只中で、月に着陸する11号の船長にニールが任命される

「子供たちと向き合って!戻らないことへの心構えをさせて!あなたの役目よ、それが。私はもう…できてる。」

月面着陸のシーンも鳥肌がたつほどでしたが、ラストのニールとジャネットの対面のシーンがよかった。

「月に着いたら何て言うの?」

NASAに選ばれたときにジャネットと手を繋いで"冒険ね"と言われたニールが微笑むシーンから始まって、無事に帰還してからのジャネットとの間に言葉はなく…その前の月面での娘カレンとの本当の別れみたいなシーンもあって、なにより有名なあのセリフ"人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である"という言葉が、この映画を観る前とは明らかに違う言葉として感じることができたのが良かった。

余談ですが、月面着陸の最中にしつこく鳴ってた"アラーム1201"と"アラーム1202"がねぇ、すげぇ気になって…管制官が「なんでもない」とか言ってっから、この大事な場面で"なんでもないアラーム"って何よ?てちょっとムカついたんだけど…"当時のコンピュータは今の電子レンジよりも非力で、処理しきれない量のデータが流れ込んでいた"から、コンピュータが当てにならず、手動操作にしたってことらしいです。

それと、どうでもいいけどアメリカ星条旗を立てるシーンがないとかって言い争いもねぇ…ニールさんのあの"人類の飛躍"てセリフ台無しじゃね?
福井康之

福井康之