oceanmax

冬の旅のoceanmaxのネタバレレビュー・内容・結末

冬の旅(1985年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

SNSの発達やコロナ禍により、個の在り方や人との繋がり方が変化しつつある昨今。
だからこそ本作の描くテーマはとてもタイムリーにすら感じる。

映画の冒頭から主人公のモナが死体となり発見される。

結末が最初に提示されるが故に、モナの行動や言動の裏に隠れされた本心が、彼女の表情からより際立って感じ取る事ができる。

まさに映画的表現を体験する事ができた。

同じく女性ホームレスを描いたサフディ兄弟の「神様なんかくそくらえ(2015)」では、主人公の寄る辺なさや揺れ動く感情を、激しいカメラワークなど技術的な手法で表現していた。

一方、本作では映画の脚本構成を用いて、作品全体に主人公の隠れた内面を映し出すという、非常にシンプルかつ効果的な表現がなされている。

作品のつくりはミニマムでありながら、その深みを感じさせられる素晴らしい作品だった。


※以下、完全に個人的な愚痴

話は少し変わり、今回劇場で鑑賞できたものの少し残念な事があった。

作品の捉え方は人それぞれであることを前置きした上で、

所々で聞こえた無神経な一部の観客の笑い声に、怒りというか悲しさを感じた。

例えば売春したと思われる男がモナのテントから出てきたシーンなど、なぜ声を出して笑うのかと理解に苦しむ事が何度かあった。

こういう形で不快な思いをして劇場を後にしたのは初めてだった。

「俺は映画を知っている」「俺はユーモアの分かる男だ」とでも言いたげなあのおじさんの笑い声だけは(少なくとも私にはそう聞こえた)、2度と聞きたくない。

ただ、人によっては全然違う観方をする事を知れたという意味では貴重な機会になった。
oceanmax

oceanmax