山田森氏

冬の旅の山田森氏のネタバレレビュー・内容・結末

冬の旅(1985年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

あまり刺さらなかった。主人公の切実さが画面から伝わって来なかった。同じ系統の作品でWANDAやウェンディ&ルーシーなどの作品がある。その2作品の主人公とも家を出て放浪するに至る明確な目的があり、また旅を通しての葛藤や苦難が描かれていたが、今作では何故放浪するに至ったかの説明がセリフで描かれるもののそれ以上の物が画面から伝わってこなかった。ましてや、路上の寝泊まりで主人公はレイプされる描写があるものの、その後もあっけらかんと路上生活をしているのにはどうしても違和感を覚えた。何度も例に出すが、ウェンディ&ルーシーで主人公が止む無く路上生活を送り、生命の危機を脅かされるような危険に遭遇した後に取る行動とは完全に一線を画している。

また、車や徒歩で移動する描写は一応あるものの、主人公は基本的に遠くに行かず、限定された地域にとどまっていて、”移動”というロードムービーとしてのジャンル的な面白さがほぼほぼ無いのも残念だった。これに関してはアメリカとフランスの地政学的な考えの違いがあるのかもしれない。

ただ、主演のサンドリーヌ・ボネールのあっけらかんとした飾らない魅力や主人公の死から時間が巻き起こって、キラキラした浜辺から全裸の主人公が出てくる輪廻転生的な構成は見事だと思った。
山田森氏

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