Genichiro

冬の旅のGenichiroのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.6
なんだこれは…すごい映画だ。人から食べ物を、タバコを、ウィードをもらって、何か盗んではお金に変えようとする。「楽をして生きていきたいの」が口癖で誰とも交わらず、なんの感傷もなく出会った人と別れていく。アナーキーすぎる…こんなに風呂入らないのとか絶対無理だ。証言者たちのコメントが各パート終わるごとにすぐ挿入される構成も謎だし、途中カメラを向いて語りかけるシーンとか何よ。印象的な横移動ショットなど撮影ギミックも良いんだけど、ベッドにどかっと寝転んだ時に映る両足などほんとに細かいモーションとカットによって何も見えてこない登場人物たちを立体的に感じることができる(しかし何も見えてこないというのもすごい)。全員言及必至の感電シーンやおばあちゃんとのやりとり、終盤の謎のワイン祭りなど各シーンの強烈さについても語りたくなってしまう。出会った人々の証言を経て今作を見終わった時には彼女の生きた軌跡を目撃したと観客は確信し、劇場を去る。
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