ノットステア

笑う男のノットステアのレビュー・感想・評価

笑う男(1928年製作の映画)
4.6
○きっかけ
『ジョーカー』(2019年)のモチーフとなった作品ということで観たくなった。しかし、アマプラでも観ることはできない。てか他のサブスクですら観ることはできない。
ついついDVDを買ってしまった。コスミック出版のDVD10枚組で1800円+税のもの。「ホラー・ミステリー文学映画コレクション 恐怖と幻想の世界」



○ちょっと考えたこと
NHKの「視点・論点」という10分番組を最近録画して観るようになった。
ある回で、マスク生活に関する話を聞いた。
印象的だったのは、マスクを皆が着ける生活が続くことで、顔認識能力が育たないおそれがあるという話である。30歳くらいまで成長し、何千人もの顔を識別できるはずだが、子どもの頃からマスクの顔ばかり見るというのは異常事態だという。
もう一つ印刷的だったのが、欧米の人たちと日本人の違いである。

欧米の特徴
・覆面禁止法
・目だけでなく口元で表情を認識する。(赤ちゃんの頃から)
・絵文字は口元で表情を表し、目は一緒。

日本人の特徴
・主に目元で表情を認識する。(赤ちゃんの頃から)
・(T_T)(-_-)(^_^)

外国の人にとってのマスク≒日本人に取ってのサングラス、みたいに言っていた。

私のような日本人と、製作国の人たちとでは、この映画の印象ってまたちょっと違うのかな?
笑う男(グウィンプレイン)は、悪党の外科医によって口が笑った状態で固定されてしまった人物である。私からしても不気味さはあったが、口元の表情が読み取れないというのは、日本人が受け取る印象以上に不気味であり、笑いの対象なんだろうか。



○感想
面白かった。感動的。辛い身の上。目だけで感情を表現していた。
チャールズ・チャップリンの作品と同じように、白黒の音無しの映画。会話は字幕で表され、チャップリンよりも少し多め。チャップリン映画も良かったけど同じくらい『笑ふ男』も良かった。
『街の灯』を制作するときに『笑ふ男』を参考にしたんじゃないかっていう気もした。調べてません。勘ですけど。目が見えないからこそ、内面の美しさを見ることができる。目が見えると内面が見えなくなるのは残念なこと。

以下、ネタバレあり。













グウィンプレインの自身のなさ、悲しそうな目元が印象的。
目の見えないデアと両想いなのに、自分には結婚する資格がないと思ってしまう。自分の顔を見ても愛してくれる人がいるなら、自分にはデアと結婚する資格があると考える。



○印象的なセリフ
・グウィンプレイン「デア。僕には君を愛する資格がないんだ」
デア「グウィンプレイン。私はあなたのものよ」
グウィンプレイン「僕の顔を見もせずに結婚すると言うのかい?」
グウィンプレイン「みんなの笑い声が聞こえるだろ。僕は笑いものの道化師だ」

・デア「自分が悲しい時でも人を笑わせるなんてすごいわ」

・ピエロ「お前がうらやましいよ。笑い顔を落とさなくていいんだから」

・グウィンプレイン「この顔を見ても僕を愛してくれる女性がいるかもしれない!もしそうなら僕にはデアと結婚する資格がある」
ウルシュス「バカなことを言うな。デアはお前を愛してるしお前の顔を見ることもない」

・デア「神様が私の目を閉ざしたおかげで、私にはあなたの本当の姿が見える」



○あらすじ(あれ、上手くまとめられてないな、、、)
17世紀 イギリス
国王陛下ジェームス2世と宮廷道化師バーキルフェドロ。バーキルフェドロの芸はどれも残酷。常に偽りの笑みを浮かべていた。
クランチャーリー卿、王家に逆らい逃亡した高慢な反逆者。逃亡していたが、息子のことが気になって戻ってくる。息子のグウィンプレインは悪党コンプラチコの外科医ハードクァノンヌの元へ送られていた。
鉄の処女で処刑。

グウィンプレインの子供時代。港。雪。
吊るされた死体。(『パイレーツ・オブ・カリビアン』を思い出す。海賊の死体?見せしめ?)
顔を整形され、いつも笑ってる顔になった少年グウィンプレイン。雪降る夜に一人ぼっちになる。雪の中をさまよう。凍死した女性が抱いていた赤ちゃん(盲目のデア)を拾う。
ウルシュスの家へ。ご飯を貰うために。

数年後。
ウルシュス一座、道化師になったグウィンプレイン「笑う男」。デア。見世物として人気になっていた。
元外科医で見世物屋になっていたハードクァノンヌがウルシュスの前に現れる。サザーク祭り。

ウルシュス「稽古に身が入っとらんな。恋の病を治すには祭りの間に結婚すればいい」
デア「結婚の話になるとどうして私から離れるの?」
グウィンプレイン「デア。僕には君を愛する資格がないんだ」
デア「グウィンプレイン。私はあなたのものよ」
グウィンプレイン「僕の顔を見もせずに結婚すると言うのかい?」
グウィンプレイン「みんなの笑い声が聞こえるだろ。僕は笑いものの道化師だ」

外科医ハードクァノンヌから女侯爵への手紙。宮廷道化師バーキルフェドロは野心家。ジェームス2世の死後も宮廷に。

バーキルフェドロ「女王がまた宮廷で退屈な音楽会を催すそうです。招待状を読んで差し上げましょう。」
ジョージアナ「しけた音楽会なんて欠席よ!面白い話をして」
バーキルフェドロ「あるにはありますが、ジョージアナ様にも関係することです。」
ジョージアナ「いとしのデイリー・モア卿に関係あること?もしそうだとしたら私の婚約者はずいぶんと愚かだこと」
バーキルフェドロ「きっと興味を持たれますよ。ですがまず先に女王陛下にお伝えせねば」

バーキルフェドロ「陛下、いい知らせです。生意気なジョージアナに関することです。」
女王陛下「デイリー・モア。お前の婚約者にはしつけが必要ね。」
デイリー・モア「また欠席とは無礼が過ぎる。彼女の無礼さは嘆かわしい。私が連れて参ります」
バーキルフェドロはアン女王に話す。クランチャーリー卿の息子が生きてる(=領地を返さなければならない。)
クランチャーリー卿の息子を見つけたら、私(宮廷道化師バーキルフェドロ)に褒美をもらえるかと女王陛下に交渉。

ハードクァノンヌを拷問室へ。

ウルシュス一座。ピエロメイクの男たち。
デア「自分が悲しい時でも人を笑わせるなんてすごいわ」

ジョージアナ女侯爵からの手紙「私はあなたを見ても笑わなかった。あの感情は哀れみ?それとも愛なの?使用人が夜中にあなたを迎えに行くわ」

グウィンプレイン「この顔を見ても僕を愛してくれる女性がいるかもしれない!もしそうなら僕にはデアと結婚する資格がある」
ウルシュス「バカなことを言うな。デアはお前を愛してるしお前の顔を見ることもない」

アン女王からジョージアナへの手紙。
「ジョージアナ殿。あなたの領地を所有していたクランチャーリー卿には跡取り息子がいました。言いにくいですがその息子とはグウィンプレインという笑う道化師です。あなたの今後を考え、デイリー・モア卿との婚約を無効とします。そしてグウィンプレインを復位させあなたの夫とします」

グウィンプレインは犬に話しかける「彼女も笑ったよ。他のみんなと同じだ!」

デア「神様が私の目を閉ざしたおかげで、私にはあなたの本当の姿が見える」
抱きしめ合う。
(グウィンプレインのこの時の、笑顔。感動的だった。目だけでわかる。)

グウィンプレインが逮捕される。
グウィンプレイン「デアには秘密に」
ウルシュス「チャタム監獄へ連れていかれる。デアに知られてはならん!」

監獄の前で待つウルシュスに対してある男が「そこに入った奴は戻らない。待つだけムダだ」

夜明け。監獄から棺桶が運ばれてくる。
ウルシュス「もう劇は終わりだ」

バーキルフェドロ「ハードクァノンヌはチャタム監獄で死に奴の自白ではっきりしました。クランチャーリー卿の遺児に間違いありません」
アン女王「気の毒なジョージアナは財産のために道化師と結婚ね」

「グウィンプレインは今捕らわれの身です。明日の議会で彼を貴族として承認します」

デア「もう開演時間よ」
ウルシュス「デアを傷つけたくない。絶対に悟られるなよ。舞台を続けるのだ」
ピエロたちがグウィンを呼ぶ。大歓声のふり。
ウルシュス「今までで最高の客入りだ。大歓声を聞け!」

「お前たちは国外追放だ。明日出発しろ。笑うペテン師、グウィンプレインは死んだ」
デア「私のグウィンプレインが…信じられない!」

一座は波止場へ向かう。
そこに貴族がとおる。
グウィンプレインは歩いてアン女王の元へ行くことに。

「道化師を貴族院に迎えるとはけしからん。これが奴の正体だ!」

ある貴族「『笑う男』のいとしい娘ではないか。置いていかれたのか!来なさい。グウィンプレインと女王を驚かそう」

グウィンプレインは貴族に迎え入れられる。ジョージアナを妻にさせられる。
貴族たち「女王の命令を笑っている!」「議会をコケにしている!」
笑う貴族たち。

アン女王やグウィンプレイン、貴族たちがいる部屋に入ろうとするデア。それに気づき、入らないように案内するバーキルフェドロ。
抵抗するデア。
倒れるデア。

グウィンプレイン「抗議する!好きでもない相手とは結婚しない。たとえ女王の命令であっても!」
貴族「女侯爵を阻むとはなんたることか。無礼な道化師め!」
グウィンプレイン「王が僕を道化師にした!」
貴族「女王の慈悲でお前は貴族になったのだ。陛下の命に従うのは当然だ!」
グウィンプレイン「女王が僕を貴族にした…」
(挑発的にも見える笑顔が印象的だった。)
「その前に神が僕を人間にした!」

ジョージアナ「笑う道化師を捕らえなさい。女王を侮辱したのよ!」

窓ガラスをぶち破ってグウィンプレインは外へ。

帰るがウルシュス一座がいない。国外追放になったことを知る。追手が来る。
地元の人達が追手を押し止める。その間にグウィンプレインは閉ざされた一座の建物の扉をよじ登る。
屋根から逃げる。
剣で戦う。相手方落ちていく。

船が出港。

グウィンプレインが波止場に着く。声が届かない。
愛犬ホモが気づいて海に飛び込む。

グウィンプレインは小舟で出る。追いかけてきた貴族の首元に噛みつくホモ。

船は夜明けに向かって進む。