ノットステア

花魁お雪と半蔵廓のノットステアのレビュー・感想・評価

花魁お雪と半蔵廓(2014年製作の映画)
3.0
Viddsee.comというアジアの短編映画を紹介するオンライン・ プラットフォームで鑑賞。
https://www.viddsee.com/video/oiran-oyuki-to-hanzo-kuruwa/er4bj



○FUKUOKA INDEPENDENT FILM FESTIVAL 監督のコメント
落語映画です。
落語という大衆芸能と、映画という総合芸術をかけ合わせたらどうなるのか。
落語の多くの噺は男性視点でストーリーを語るそうですが、じゃあ女性視点のストーリーを一緒に描いたらどうなるのか。
そんなことを考えて作ったら、なんともヘンチクリンな作品に仕上がりました。



○きっかけ
2024/5/5、友人と「大吉原展」に行ってきた。勉強になった。
 人身売買の歴史をエンタメ化しているということで、「大吉原展」SNSで炎上した。それが理由で「大吉原展」の存在を知り、友人と行くことになった。
 行ってみて、叩かれるようなイベントではなかったと感じた。
 それは学びがあったから。図録も購入したのだけれど、そこに法政大学田中優子名誉教授が書かれた『吉原という「別世」』という文章のおかげで理解が深まったと思う。

 日本の遊女は、奴隷であった。それは、遊女は収入を自分のものにできなかったから。
 家族のために前借金をし、その返済のために、遊廓で働かされた存在。やめることができない。年季奉公契約は六〜八年らしく、その間は拘束された。多くの未成年者がいて、鞭で打たれたり、食べ物を与えてもらえなかったりなど、虐待があったらしい。
 職人や、芸者は自分の技を磨くことで成長したり、尊敬されるようになる。師匠として働くことができるようになる。しかし遊女は若い時しか価値を認められない。価値は上がることはなく、下がっていく。
 病と暴力の危険が常に身近だった。若くして亡くなる遊女は少なくなかったらしい。
 身売り奉公を受け入れざるを得なかった遊女の境遇から、世間からは共感や同情、敬意があったみたいで、それは世界的にみて珍しいことだったらしい。
 その奴隷に該当することを他国に指摘されると、芸娼妓解放令が出される。さらにその次の年、一八七三年(明治六)に「貸座敷渡世規則等の制定」がおこなわれる。これがひどいものだった。遊女が自由意志によって個人的に営業をおこなっている、という形をとるための制度。「見せかけの解放」。
 自由意志で営業しているということで、世間からの厳しいまなざしが強まったらしい。
 売らせる者の存在や買う男の存在が消された再定義であり、前借金に縛られて強要させられる実態は変わらなかった。一度吉原を去っても結局、家族や買われた男によって戻されていたのに、自分の意志で営業していると思われたなんて。

以上、「大吉原展」に行ったのだから、吉原関連の映画を観てみたいなと思っていた。
そりゃそうよね。大体ロマンポルノ映画だった。困った。エロいかエロくないかなんてどうでもいい。面白い(もちろんFunnyではなく。)ものが観たい。何を観ようか困った。『吉原炎上』は観てみたいけど。
そんなとき見つけたのが今作品。



○感想
以上、「大吉原展」で勉強しちゃったから、今作は面白くなかった。
いや〜、落語映画ってなんだ?面白そう!って思って観始めたんだけどな。。。

昔の男の遊び=廓(くるわ)=花魁。浅草の吉原、、、
って落語で始まる。江戸の吉原遊廓の話かと思いきや、地下アイドルの話だった。
なんてこった。 
昔の男の遊び=廓(くるわ)=花魁≒地下アイドル=今の男の遊び

しかも、ファンの半蔵という男がアイドルのお雪に求婚。
お雪の現場には年下アイドルが現れ、自分のファンを持っていかれていた。残るファンはその半蔵だけ。なのにお雪はもう少しこのアイドルの世界にいたいと言い、返事を渋る。
なんでや!江戸の吉原では何度も火事が起きたけど、それはほぼ遊女たちによる放火だったし、芸娼妓解放令後大半が辞めたのが吉原遊廓だってのに!もう少しアイドルでいたい。そりゃそうか。遊廓=アイドルって設定に無理があんのよ。



○その後のあらすじ
求婚した半蔵という男は、自分の家に廓を作る。まだアイドルを続けることができるよ!ってことで一緒に住む。結婚する気になったお雪に対し、半蔵はそんな気はないみたい。アイドルでいてほしいと、自分の家なのに、本気のステージを求める。ステージに出てくるのかどうかでもドキドキさせろという注文。なんなんこれ?
お雪はその家でアイドル引退宣言をする。観客はそらその家にいるのは半蔵だけなのにね。。。




ちなみに、僕が「大吉原展」に行ってよかったなと思えたのは、良い絵を見つけたから。気に入ったのは、
宮川一笑「吉原風俗図」※二本差しの侍の服装がカッコいい。
歌川広重「東都名所 吉原仲之町夜桜」※二点透視図法、左右の消失点に向かって歩く人物たち
歌川国貞「桜下吉原仲之町賑之図」※身分や職業を描き分け、表情やしぐさがみんな生き生きと描かれている。
喜多川歌麿「青楼十二時 続 卯の刻」※脱ぎ着の多い羽織。着ているときに見えない羽織裏に贅を尽くす通人のお洒落の見せどころ
渓斎英泉「鯉の滝登り裲襠の花魁」
歌川豊国 扇屋内 花扇
菊川英山「花魁図」
鳥居清満「浮絵新吉原紋日図」※透視図法
歌川国貞「江戸新吉原八朔白無垢の図」
栄松斎長喜「遊郭善玉悪玉」