ベビーパウダー山崎

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

4.5
中心の人物はもちろん、脇で動いている一人一人が確かに生きている。扉を開くと、その部屋ではそれぞれがそれぞれの「仕事」をしている。当たり前に見えるが今ではその過程をカットしてしまう映画が大半であり、その名もなき人々を描くことによってメリル・ストリープとトム・ハンクス(の世界)がはっきりと浮かび上がってくる。キャラクターの生活や生き方を演歌調にクドく見せてしまうと池井戸潤原作の日曜ドラマになってしまう、人物を深く掘り下げない、まず「仕事」が主役であり、その目的のために集まった者たちの言動をスピルバーグは淡々と映していく(そう考えると『ミュンヘン』あたりと実はよく似ている)。それにしても、広くて大きな空間で沢山の人物が作業をしているシーンはなぜこれほどまでに興奮するのだろうか。各々が見つけ出したピースを用いて難解なパズルが完成していくような圧倒的な感動のあとB級映画的(デパルマぽい匂いもする)な歪なラスト、まだまだ独創的で野心溢れるスピルバーグ。素晴らしいと思う。