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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のringrintaroのレビュー・感想・評価

3.8
ペンタゴンペーパーズ

『レディープレイヤー1』制作中のスティーブンスピルバーグ監督が脚本を読んで「すぐにこれを映画化しなければならない」と感じて急ごしらえで作った作品という事です。
2016年にアカデミー作品賞と脚本賞に輝いた『スポットライト』に震えた方ならば、感動出来る作品である事間違いなし!
また、映画ファンならば、トムハンクス、メリルストリープ共演と言うだけで見ないわけにはいかないでしょう。
◆ストーリー
ベトナム戦争への厭戦ムードが高まっていた1971年、ニューヨークタイムズは、ペンタゴン(国防総省)から流出した最高機密文書の内容を紙面に発表する。それは政府がひた隠しにしていたベトナム戦争の状況分析であり、そこには政府が比較的早い時期からベトナムでの不利の状況、終結の目途が立たずに泥沼化していく状況が明確に分析されていた。
ニューヨークタイムズに先を越された形のワシントンポストは新たな機密文書を手に入れるが、ニューヨークタイムズは 政府から スパイ容疑で提訴されて係争中だ。どうしても掲載したい編集主幹のベンブラッドリーは、新聞の社主キャサリングラハムを説得するが、政府の提訴羽目に見えている。自身の投獄、さらには亡父、そしてやはり亡くなった夫が残した紙面の存続などを考えると簡単に掲載は出来ない。
当時の国防長官であり長年の友人であるロバートマクナマラ(ブルースグリーンウッド)もキャサリンに警告するが、ブラッドリーの激励、そして父親の言葉「新聞記事は歴史書の最初の草稿」という言葉と、建国の父達が遺した合衆国憲法修正第一条にある「表現の自由」、「報道の自由」を守るために自分を奮い立たせる。

新聞が巨大な権力と闘うという構図、また対立する権力の側にも敬愛する友人がおり、ジャーナリズムを担う立場、その使命と、友人を裏切る事になるかもしれないという心情の対立、正に「義理と人情」の内的闘いというストーリーも『スポットライト』と同じです。
目新しい構図ではありませんが、亡き夫と父の遺した新聞に対するキャサリンの真摯な気持ち、経験のないまま新聞を任され、運営については半ば無視されるように過ごしてきたが戸惑いながらも突き進もうとする勇気、メリルストリープなら当然でしょうが、彼女はキャサリンを繊細に演じています。
また、ちょっと声色を作り過ぎじゃないかと思えるブラッドリー役のトムハンクスですが、海千山千のジャーナリストを演じるトムハンクスの存在感も流石です。
流石のお二人ですが、作品としてのこの映画の白眉はラスト。
アランJパクラ監督の『大統領の陰謀』のオープニングシーンを再現しています。
のラストシーンは鳥肌もの。
『大統領の陰謀』はニクソン大統領のウォーターゲート事件を告発した、やはりワシントンポストの二人の記者(ロバートレッドフォード とダスティンホフマン が演じています)を主役においた名作です。
これに加えて本作『ペンタゴンペーパーズ』、更に『スポットライト』などの映画を見ると、新聞記者魂というか、彼等のプライドに震える思いがします。
しかし翻って我が国の、記者クラブに安住するマスコミは……と、ここまでにしておきます。

ベトナム戦争の歴史的知識については、ごく一般的な範囲で十分。また、何の知識も持たない方にも観れるように作られています。
この手のジャーナリズムを題材にした映画が好きな方にはおススメです。
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