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アネットのせっのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
4.3
酔っ払いって怖いよね。

スタンダップ・コメディアンのヘンリーとオペラ歌手のアンが結婚して子供を生んで徐々に変わっていくミュージカル。

スタンダップ・コメディが日本には馴染みのない文化もあって、ヘンリー、なんかこの人怖い・変だなと思ってたらちゃんとその感覚合ってて安心した。足くすぐるイチャイチャとかアダム・ドライバー身体でかいし、変なおどけ方で怖いのよ。

そしてヘンリーの暴力性がついに全面に出るシーンも、酔っ払って制御の効かない大男の怖さ。この"際どい男"を演じるの『最後の決闘裁判』に続き、上手いなぁアダム・ドライバー。

このポスターのシーン、見る前は男女が普通に踊ってるかと思いきや、よく見たらちゃんとアンが引っ張られてるように見える。男性の暴力がいかに傍から見て隠されているのかわかるし、劇中でもヘンリーって殴る蹴るのあからさまな暴力は振るわないけど何故かすごく暴力的に見えるのよな。

あと、ヘンリーが落ち目になってきて妻を殺したジョークを披露して観客にキレられるシーン、めっちゃウィル・スミスの件思い出した(笑)こういうブラックジョークって扱う人の感覚と受け取る側の感覚の擦り合わせみたいなもので、それが少しズレるとすぐアウトになる。ここにも一種の"際どさ"みたいなのがリンクしてるように感じた。

最初のショーで、銃で撃たれる演出ほぼ誰も笑ってないけど1人だけ笑ってる人がいて、これがスタンダップ・コメディの本質なんだろうな。そのジョークで笑える人も笑えない人もいて、そのジャッジはその場の雰囲気が決めている。あまりにもクリーンすぎるコメディしか見てない日本人には難しい文化だ。
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