どらどら

アネットのどらどらのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
5.0
- Now you have nothing to love.

愛は共犯行為だ
一方通行でそれは成立しない
しかし、我々は異なる人間である以上、同じ思いを抱くことなど不可能である
したがって選択肢は一つしかない
「同じものを見ている」と2人で幻想を作り上げる
それしか、ないのである

ではその「愛の産物」たる子供は?
それは「愛」の所有物なのか?
愛の欺瞞性が暴かれた今、そのような言は全く通用しない

アネットははじめから
父の欲望の道具でもなければ
母の復讐の声でもない
アネットは「アネット自身」のものである

アネットの視線は私たちに向けられる
“Stop watching me”
我々は無関係ではいられない

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衝撃を受ける。間違いなく今年封切りのベスト。
壮大なロックオペラのようでありながら、この映画が懸けるのはたった一瞬- アネットが実像を手にするその瞬間- である
その一瞬に、この映画の全てがある

有害な男性性についての映画だと思って見に行ったので、その予想外の着地に衝撃を受けた
もちろん、告発シーン、さらには男同士の争いなど有害な男性性は確実に炙り出されている
しかし、それはかなりのクオリティではあるものの、既存の作品が扱ってきたそれを超えるものではない
この映画は、さらにその先の「母の怨念」までも否定し、その否定をヘンリーに背負わせる
それこそ、この映画のやりたかったことで意義だ

はじめ、そしてラストで繰り返されるこれは「劇だ」というものいいは、全く免罪符ではなく、まるでヘンリーのステージのように挑戦的である
この物語- そう、物語- の引き受け手はわたしたちでしかない
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