しん

アネットのしんのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
3.1
ミュージカルという形式を用いることで、リアルとフィクションの境目を曖昧にし、主人公の願望を上手く表現していたと思います。アダム・ドライバーの丁寧な怪演も光りました。

本作はタイトルが『アネット』です。つまり娘の物語です。最初の方は、なぜこのタイトルなのか謎でしたが、後半は、斬新な手法(パペットを意図的に使う)によって子どもという地位の不安定さを中心に据えた物語にしており、その意味である程度の納得感もありました。周囲の大人たちは、主人公以外も含めて自らの願望のために子どもがいると(無意識的に)思っています。安っぽい背景も含めて、お前が生きている(認識している)世界はハリボテだぞというメッセージが透けて見えます。

このようにコンセプトは面白いし、役者の演技もよかったのですが、何となく一歩足りない感じが残ってしまいました。不思議な感覚なのですが、監督が目指したものが成功しているかと言われると、完全には首肯できません。もしかすると、テーマや手法の斬新さに比して、一つ一つの事象が平凡だったからかもしれません。子どもをものとして使うのも、本当にザな感じだったので。その辺に少し不満が残りつつも、面白い作品ではありました。
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