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罪人と聖者のesのレビュー・感想・評価

罪人と聖者(2014年製作の映画)
3.3
正直、映画としては全く心揺さぶられなかったが、フィリピンという国の急速な変化について改めて調べるきっかけになった。

1990年代くらいのフィリピン、メトロマニラの貧困街パヤタスが舞台。
この土地は元々は小規模な農村地だったが、1973年に国からゴミの投棄場として認可を受け、更に1988年に立ち退き対象者の再定住地にも指定された為、貧困状態の人が大量に集まる地域となった。
貧困の中、ゴミ拾いの仕事をする人々が辛さを紛らわせる為に違法薬物が広がった。

この無秩序を見ると(無秩序となった理由には欧米そして日本の侵略がある事を忘れてはならない)、ドゥテルテ大統領が何故支持されるか分からなくもない気がしてくる。他所から見れば犯罪者と方向性が違うだけでやっている事は同じだと思うが、秩序を齎した実行力を評価してしまうのかもしれない。
貧困街という事もあるけれど、この時代のDV被害者達は司法で全く守られていなかったが、1995年の反セクハラ法、97年の反レイプ法、98年のレイプ被害者保護法に始まり暴力から女性や子供を守り、女性の地位を認める法整備が進められてきた。宗教上の理由から離婚や中絶ができないなどの問題も多々あるが、ジェンダーギャップ指数で見るとアジアのトップクラスにいる。女性の社会進出率だけをみれば日本とそこまでの差は無いかもしれないが、影響力のある地位においての女性の占める割合が日本とは比べ物にならないくらい高い。

パヤタスは、多くの死傷者を出した2000年のゴミ山崩落事故を受けてゴミ山が一時閉鎖されたがパヤタスの名前とゴミ山のイメージがフィリピン全土に広がり、パヤタス出身者に対する差別意識も広がった。
そんな中、立ち退き計画も進められたりして(現在は停止中)、問題の根本が解決しないまま行政によって「掃除」されている。

カトリックを絡め葛藤を使った微妙なメロドラマを描くよりも、どうせパヤタスを描くなら貧困街の負の連鎖についてもっと深く描いた方が見応えがあったように思う。
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