屠畜場と恋の夢、一見縁遠いような組み合わせが詩的で秀逸。
HSPの話って個人的・感覚的に理解できないところがあって苦手なのだが、今作は割としっくり来た。
マーリアは職場で出会った片手が不自由な男エンリケに対して好意を抱くが、うまく接することができない。そこで玩具やソルトシェイカーを用いて会話を再現したり予行演習したりするのだが、そこがマーリアの心情のわざとらしくない説明になっていて良かった。
「恋愛とは何か」が感覚的に理解できないからこそ、それが何であるかを理解しようと眼差しを向ける様が愛おしい。やがて原理的に「触れ合うこと」を発見した彼女が前向きに課題に取り組むところもよく出来ている。
本作には真の意味での原理主義というか、人間の営みを動物のプリミティブな本能に立ち返って捉えようととすることで生じる独特の鋭さが感じられる。
CDショップ店員のおすすめ強すぎ。