Yu

心と体とのYuのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.8

カンヌで賞を獲った「ラブレス」や「ザ・スクエア」、そしてベルリン国際映画祭最高賞を獲得した今作。
アカデミー外国語映画賞にもノミネートされたこの3作品が、一気に4月に公開される中でどれも期待を裏切らず最高に素晴らしいものだったが、個人的には今作が1番大好きな作品となった。

冒頭、まるで「ラブレス」を想起させるような雪景色の林の映像から物語が始まる。
だが、こちらが捉えるものは2頭の鹿の姿。

今年はどうも鹿と縁があるようで、「スリービルボード」や「聖なる鹿殺し 」とどちらもメタファーとして扱われている。
が、その2作品よりも、やはりこの1週間、「フロリダ・プロジェクト」から始まり、「ラブレス」、「ザ・スクエア」の流れで今作を観て感じたことが心の中を支配してならない。

それは、人間が人間であるが故に、生きる事を複雑にさせているということ。

動物よりも様々な能力を与えられた人間は、幸せや生きる歓びを際限なく見出しながらも、一方であらゆる社会問題を生んでいる。利己的、排他的、関心無関心、欺瞞、貧富…

2頭の鹿、そして若手女優と素人男優に対する監督の演出は、とても素晴らしいものだった。
心の障害を持った若い女性と、体の障害を持った中年男性。
2人は夢の中では全ての弊害から解き放たれ、純粋に心を通わす。
逆に2頭の鹿は夢の中では能力を持て余し、コミュニケーションがうまくとれない

水を浴び陽を浴びて自然を感じ取るように、言葉でなく伝い伝わる普遍的な想い。
“ちょっと用事を済ましてから行くので遅くなります”
電話でのこのシーンは涙が止まらなかった。

“夢”と言う言葉を使うのは間違いです。
今作を語る上であらゆる所で使われている言葉にも関わらず、そう言い切る監督の眼差しに、この上ないほど深く共感し今でも感動がおさまらない。
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アカデミー賞授賞式前に観れていたら今作を応援してたかな。
監督はあの時のマクドーマンドの掛け声で立った女性の1人。
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