品質管理官のマーリアは食肉工場に派遣されるがコミュニケーションがうまく取れずひとり職場で浮いてしまう。無表情で杓子定規に仕事をこなす彼女を同僚達はロボットみたいだと冷笑する。財務部長のエンドレはマーリアを気にかけて、当たり障りのない会話をしようとするが、空気の読めない返答をされ面食らう。
そんなある日、工場で牛用の発情誘起剤が盗まれ、犯人探しのために社員は個別に心理面接を受けることになる。どんな夢を見ましたか？という質問に同じ回答をしたマーリアとエンドレ。同じ夢をみたと知った2人はその日から互いを意識し始める。
エンドレとの距離を縮めたいマーリアは家で会話の練習をしたり、カウンセラーとの対話に後押しされ、誰かに触れる感覚を試す。そして、雪に覆われた大地から芽吹く植物のようにマーリアの心に少しずつ未知の感情が芽吹いてくる。
的確に形容する言葉が見当たらない不思議な映画。食肉工場の日常が印象的。放血された血が無機質な白いフロアに、より赤く鮮明に映り、まだ温もりを持った生命の残り火は、そうなるのが当たり前のように排水溝に流されていく。
映画冒頭で異様に眩しい太陽の光から隠れるようにして足を引いていた彼女だけど…。
