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怒れる女神たちのmのレビュー・感想・評価

怒れる女神たち(2015年製作の映画)
3.9
インド映画といえば歌って踊って尺が長い娯楽映画というイメージだけど、ここ数年は主婦の尊厳と社会進出をエンタメに乗せて問う「マダム・イン・ニューヨーク」やフランス映画のような複雑な余韻を残す「めぐり逢わせのお弁当」等、新たな女性作品の流れができつつあり(この流れの源泉にはきっと「チャルラータ」や「ビッグ・シティ」がある)、「Angry Indian Goddesses」こと「怒れる女神たち」もその一本。

今作は写真家や主婦、女優に会社社長等立場の異なる女性達が仲間の結婚祝いで集まり交流していく事で、それぞれの悩みや苦しみが浮き彫りになっていく群像劇。インドの、というより日本を含む世界中の女性達が抱えるありとあらゆる苦悩や問題をこの一本に叩き込もうという監督の野心は素晴らしいがやはり詰め込み過ぎた感は否めず、中盤はテレビドラマのダイジェスト版のように見える所もある。
しかし全編弾ける女優達のエネルギーや、終盤のある事件の描写と結末に込められた怒りと哀しみの実感は力強く、この映画を決して軽く流せないものにしている。


女性への根強い偏見が多発する強姦事件へと繋がっているインドで、こうした映画が作られた事は大きな価値がある。そしてそれは日本にも繋がる問題でもある。
中盤までのテイストをなぞった作品なら日本のテレビドラマでも作れそうだが、写真家フリーダの結婚相手や終盤の事件を観ていると、こういう映画が本当に真摯に日本で作れられるようになるのは残念ながらきっともっと先の事なのだろうなと思う。
決して甘くない、エネルギッシュな女性映画だった。
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