kazuuu

シェイプ・オブ・ウォーターのkazuuuのレビュー・感想・評価

4.0
今年度アカデミー作品賞は、切なく美しい大人のラブストーリーでした。

時はソ連とアメリカの冷戦時代。とある研究所で掃除係として働くイライザは生まれつき言葉を発することができない女性で、職場と家を行き来するだけの日々が続いていた。そんなある日、アマゾンで見つかったという人魚、いや半魚人が研究所に運び込まれ、彼女は「彼」と心を通わせていく。

リトルマーメイドの男女逆転バージョンを期待すると、愕然とすると思います(そんな人いないと思いますが)。半魚人はグロテスク、そしてエロいシーンもある。しかし、そこにいやらしさはなく、芸術的でさえあります。青と緑に縁取られた世界観が、幻想的であり印象に残りました。

かのニーチェも言っていましたが、愛って公正さや正義と違って愚かなものだと思うんですね。正しいかどうかなんて愛には関係なく、相手の事を思って時には危ない行動もとってしまう。そんなどうしようもないものにどうして人は惹かれるのか。それは誰の心にも平等に降り注ぎ、心地よいものだからです。成功しながらも欲にまみれ愛を忘れた人と、社会的には差別を受けながらも愛のために行動した人々。どちらかといえば後者になりたいものです。
というしがない若者のぐちゃぐちゃな愛の考察でした。

またゲイの友人、黒人女性といった、当時社会的に声を消されていた人々と、アメリカ的な成功者の価値観に染まった独裁警備主任。極端な対比ではありますが、このような抑圧されていた人々を中心に描いた作品が権威ある賞を取ったことは、独裁的な某大統領に対する抵抗、またSNSでの拡散により性差別や人種差別への一層のフォーカスがされるようになったアメリカ社会を象徴しているような気もします。
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