なおまる

あゝ、荒野 後篇のなおまるのネタバレレビュー・内容・結末

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

評価が割れている後篇。
冗長、つまらないとも言われるが
私は総じて良かったと思う。

前篇とは打って変わって、シリアスなシーンが続く。ともった希望が次々と消えていき、観ているこちらもとてもつらい。そして最後の試合で文字通り全て泡となって消えてしまうのだ。人も、ジムも、築いた関係性もなにもかも。まるで世界が終わる一夜…
こんなに胸が苦しい試合があるか?

そして誰とも繋がれないのはケンジだけじゃなく、シンジも同じなのだ。ボクシングに向ける狂気にも似たストイックさが、ケンジやヨシコには眩しすぎたのではと思う。

彼らがケンジの背中を追うシーンがある。そのときなんともいえない顔を見せるのだ。結果、2人ともシンジから離れてゆく。

また「一緒に悪いことから足を洗おう」と言われるも、ヨシコは海に投げ捨てた靴=過去が波に揺られて戻ってきてしまうシーンもある。結局、彼女はシンジのように変われなかった。過去を捨てきれなかったのだ。

諸説あるが【映画版で】死んだのは、間違いなくケンジだと思う。

彼らには悲しいほど、ボクシングしかなかった。ボクシングでしか、つながれなかった。リングの上で会話し、愛し愛されて生きた。

同志も彼女もジムも職場もなくして、
シンジはどこへ行くんだろう。

最後にカメラに向けた射るような目。
忘れられそうにない。シンジは廃人になってしまうだろうか。観るものに委ねられるラストだ。

彼らが生きた意味はあったか。
リングで拳を交えた意味はあったか。
私は大いにあったと思う。
だって、あんなにも多くの人たちを夢中にさせた。みなこの戦いに、拳の会話に、目を奪われた。この一戦が人の心を動かし、揺さぶったのだから。きっと生涯、心に刻まれたんじゃないだろうか。彼らが「生きた」証。

ただ登場人物の縁が深すぎてご都合主義的なところもあったり、自殺防止サークルがよくわかんなかったり、そのへんは残念。
なおまる

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