みー

アナと雪の女王2のみーのネタバレレビュー・内容・結末

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

多様性の許容、尊重のお話。

抑圧から解放され、女王として幸せに暮らす中でもエルサはずっと"人とは違う"自分について悩み続けていて、悩みながらもその生活を愛しく思い大切にしていたことがもう泣けてしかたがなかった。まわりがそれを受け入れたとしても、自分の特異性がなくなるわけではなく、アイデンティティの基盤が不確定である不安は埋められるものではない。大切な人を守るため、自分を確かめるために進み戦うエルサがとにかく強くて美しかった。彼女の強さを作ったのが大切な人たちとの幸せな生活であったことがまた良い。エルサの衣装が変わるシーンは前作から通じてほんとに名場面名曲名シーンでまちがいない。心震える。

アナが「家族とゲームするのが嫌いな人もいるわよね」と、ゲーム中落ち着きをなくすエルサを気遣っていて、その成長ぶりが喜ばしかった。好奇心旺盛で前向きなだけだったアナがきちんと自分で考えを持ってまわりを気遣い、引っ張っていける人間になっていて、今作のアナは本当に強くて正しい。
アナがハンスのことをネタにしつつも絶対にハンスに恋をした過去の自分を否定しないしさせないところがとても良かった。

目的に必死になって命を落としかけるエルサを救ったのがエルサの意思をまよいなく受け取り考え目の前の正しいことを貫くアナで、そのアナが救えないと諦めたものまで丸ごと救ってみせるのがエルサで、ヒロインもヒーローもどちらの役割も目の前にあれば全うしてしまえる姉妹がとにかく尊い。

両親について、正直前作では人とは違う力を持つ子供に対して、一度の失敗で向かい合うことを放棄して抑圧し続けたいわば毒親だと思っていたのだけど、それが大きな勘違いであり、両親もまた多様性と共に生き、娘のために考え行動し、伝えようとしていたことが分かって良かった。また、両親のなれそめが王道で従来のおとぎ話的なものだったことで、より一層アナとエルサの次世代性が強調されていたのも面白かった。

クリストフも、ソロ曲のPVっぽさはちょっと面白かったけど、幼少期置き去りにされ親元との隔絶を受け入れざるを得なかったところから、よく愛する人のピンチに駆けつけて力になれる人間になったなと感慨深い。彼もまた孤独な人だったので、プロポーズできてよかった。置き去りにされるトラウマを、愛するアナがちゃんと帰って来たことで乗り越えられた。「置いてってごめんね」「俺の愛はそんなもんじゃないぜ」みたいに軽く言ったけどとても大切なやり取りだった気がしてる。置いていかれても必ず帰ってくると信じて待てるほど大切な人を作れたのは実は繊細な男クリストフにとって大きな変化だと思う。初めからずっとプロポーズのことばっか考えてたのは、これだから男は~~~~ロマンチック一旦中止しろ~~~と少し思ってしまったけど、終盤間に合ったので良しとする。また、合流直後にすぐ「何をすればいい?」ってサポートに入る姿勢がパーフェクトだった。「どこにいたの?」とか「大丈夫?」とか「探したんだよ!」じゃない。アナは女王になる、指示を出す側の立場なので、この物語に先導して守ってあげる男は求められてないことをちゃんと弁えた行動で良し。ハンスとの対比。あとバラード歌うクリストフめっちゃイケボ。


ラスト、皆で一緒に暮らすのではなく、それぞれの場所で、森と王国で、連絡を取り合い思い合い暮らしていく二人とそれを認め協力するまわりの人々は本当に素敵。多様性を尊重する、受け入れるというのは、愛があれば分かり合えて、みんな仲良くひとつ処に暮らしましょーということではなくて、それぞれが大切にしているものごとを、大切にしているということ自体を理解し受け入れ、それぞれがいるべきところ、いたいところ、居やすいところにいられるようにすることなので、エルサの居場所が王国でなかったことは悪いことじゃないし、エルサの居場所が王国じゃなかったことを責めたり悲しんだりしないアナは完璧に正しい。ほんとうに最高のラスト。


フレーズの使い回しかたというか、共通させ方が上手く、全編通して楽曲のクオリティが高くてずっと楽しんでみていられる。
あと今回ドルビーシネマで観たけれどそれがめちゃくちゃ正解だった。まじめに歴代アニメーション最高の映像だと思う。実写以上。ラストの洪水もすごいけど、船のシーンの水滴がすさまじい。

冒頭のジェスチャーゲームのオラフをひとコマずつ見たいなと思っていたらパンフレットに載っていたので嬉しい。



正直冒頭からずっと続く新出単語ラッシュとあまり知らなかったアレンデール回りの地形がわりとキーになってしまうところがこの映画を理解させにくくしてしまっているように思えてならない。そこに脳のリソース割かれるからアナやエルサの思考や選択に寄り添う余裕が損なわれてしまうのでは、と他の人の感想を見て思う。けど冒頭に両親との会話でそこら辺の説明シーンを作っておこうとすると多分二時間くらいになってしまうし説明のための思い出パートの尺が全体のなかで増えすぎてしまうしバランス考えるとああするしかなかったのかもなーーーとわたしは納得できてしまうのだけどダメかな。
違和感としては、ノーサルドラの中にアナとエルサの親族を名乗るものが一人もいなかったことが気になっている。族長は祖母なのかな?と一瞬思ってみてしまっていた。第五の精霊たる風の魔法を使う子がいなくなってしまったことをノーサルドラたちはどう受け止めていたのか。
あと気になるところとしては37年森に閉じ込められてた護衛たちが綺麗すぎてまじ魔法の森やな……となるのだけど、都合の良い解釈はないものか。


とにかく、アナもエルサもクリストフもオラフもマシュマロウもみんなみんなもう寂しくなくなって本当に良かった!という気持ち。ラストのオラフのみんな生きてる!みたいなのって締めくくりのためかと思ったけど、考えたらあの子達もエルサの仮死で一度命を失っていたのだろうな。みんな生きてて良かった。
みー

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