映画大好きそーやさん

ユキの異常な体質 / または僕はどれほどお金がほしいかの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

3.1
雪女の満たす生活。
本作は、パパからの援助で生活していた幸雄が偶然雪女と関わりをもち、同棲を始めるという、コメディ寄りの作品です。
端的に良い点をまとめると、ルックの良さと間の抜けたコメディ描写の2点は、手放しに褒めるべき水準に達していたと思います。
ルックで言うと、雪山や雪景色の映像美が抜きん出ていて、そういった場面が出る度に目が幸せでした。
コメディ描写に関しては、雪女役がお笑い芸人の鳥居みゆきなこともあって、テンポの良い奇妙な掛け合いが癖になる面白さを醸し出していました。
特に、水になってしまった雪女を治すにはどうしたらいいかと考えていた際、幸雄の凍らせてみたらどうかという提案に対して、「氷女になっちゃう〜」(台詞が違う可能性あり)という言い回しには、思わずフフッと笑ってしまいました。
ただ問題点と呼べる箇所も多々あって、冒頭の文字テロップ、ナレーション説明を用いるという、映画の力を信じていない制作陣の姿勢や、雪女の背後で揺れる、明らかにCGな湯気、雪女のローテンションから繰り出される違和感マシマシな叫び声演技、安っぽい劇伴(テーマソング)をバックに流しながらダイジェスト映像を垂れ流す、新海誠的作劇の不必要性、雪女の資金調達手段の謎等々、考え出せばキリがないほどに挙げられてしまいます。
オチ(或いは、テーマ性)に関しても、既定路線を避けたかったのかもしれませんが、作劇的には気持ちよさはなく、ただただクズがクズでい続けただけという、なんのカタルシスもない作品になってしまっていたと思います。
そこを描きたかったなら、もっと雪女というファンタジーな存在との、どうしようもない軋轢を描いていても良かったような気がしました。(どこか最終的には、幸雄が良い方向へと転じそうな雰囲気があったため、それを期待している自分がいたのかもしれません)
良い点、問題点のそれぞれを考慮して、総合的に判断した結果、上記のようなスコアに落ち着くこととなりました。(2024/4/29現在)
総じて、要所要所で面白い要素は見つかれど、テーマ性とその帰結で首を傾げてしまう怪作でした!