砂井戸

ボヘミアン・ラプソディの砂井戸のネタバレレビュー・内容・結末

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 冒頭、20世紀FOXのマークがブライアンメイっぽいギターオーケストレーションにあわせて出てくる→フレディの声が聞こえる→具合悪そうにベッドに伏せているフレディが起き上がってゲホゲホと咳き込む、その背中に飾り気のない文字でBOHEMIAN RHAPSODYとタイトルが浮かぶ……ここだけで既に「無理無理無理これはマジもう無理」って呟きながらベソベソ泣いてた。
 やっぱりフレディの最後をある程度知ってて観てる人とそうでない人とで違いはあると思いますが。

 映像がいちいちエモーショナル極まりないし、音楽はまあクイーンなんで言うまでもないし。
 役者もみんなメンバーに寄せまくってて凄まじい。
 We are the Championsの時に昔のプロデューサーが映るシーンに笑ってしまった。ライブエイドのシーンの選曲はみんな昔の曲なのに、歌詞が本当に辞世の句のような演出になってて、映画のマジックを感じた。Radio Ga Gaの歌詞とボヘミアンラプソディの歌詞を関連付けて解釈とか、まったく考えたこともなかった(クイーン詳しい人には常識だったらすみません)

 あと報道陣がよってたかってフレディのセクシャリティについて根掘り葉掘り聞くシーン、最高に胸糞悪かった。(これは同じくゲイのブライアンシンガーの経験からきているのだろうか……)
 そもそも度を越した寂しがり屋だからこそロックスターなんてのを目指さないと潰れちゃうんだろうな、と思わされる描写が大変胸にせまって良かった。

 ただ、極初期のバンドが売れてなかった不遇の頃のシーンがもっとあっても良かった気はする。
 音楽評論家に「こんなのが売れるようになったら俺は靴でも食ってやる」とか言われてたエピソードなんかを入れてほしかったかも…こういうのは言い出すとキリがないけど。

 ライブエイドをラストシーンにもってくるために、実際の出来事とは時系列が変わっていて、フレディのエイズ発覚直後にライブエイドに出演するという脚色をされている。
 YouTubeで実際のライブエイド動画を観て「思ったよりこの頃のフレディ元気だな」と思ってもそれは当然、まだその段階では病気になってないんだから……
 他にもいろいろと脚色があるのだけども、実話に基づいたフィクションだけが独り歩きしてしまわないように、実際の映像に基づいたドキュメンタリーのフィルムもあるとうれしい。
 たとえばフォックスキャッチャーのネトフリにある実話バージョンのような映像作品がフィクションと対になって作られる風潮になってほしい。
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