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ボヘミアン・ラプソディのもむのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.5
移民で出っ歯で同性愛。そんないくつもの生きづらさを抱えた青年ファルーク・バルサラは、フレディ・マーキュリーに変身してステージで歌うことで、ようやく自由を手に入れられた。だから彼の歌声は、比喩ではなく、本当に魂の叫びであり、聴く人の心を揺さぶるのだろう。

それまでの音楽の枠に囚われない構成の〈ボヘミアン・ラプソディ〉は、まさに彼が音楽に与えられた自由の象徴ともとれた。

しかし、つい考えてしまう。もしフレディが、多様な性が認められるようになってきた今日に生まれていたら。エイズが不治の病ではなくなった現在に生きていたら…。

歌のメッセージは違うものになっていたかもしれない。だが、彼の音楽的な天分は、その時代背景とは関係なく輝いていただろう。彼の純粋な音楽を、いま聴いてみたかった。

この映画をエンターテイメントとして享受し、感動できる今の時代に感謝しつつ、フレディ・マーキュリーの人生を偲び、まだ残る社会の生きづらさに思いを馳せなければ。なんてことを、勝手に考えた。
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