もむ

ジョーカーのもむのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

アーサーは誰からも理解されない。病気のせいで突発的に笑ってしまう彼を、周囲は気味悪がって遠ざける。コメディーショーを見ているとき、一人だけ違うところで笑う独特なツボも、他の人とズレている。彼は"ありのまま"の自分でいると、疎外され、生きづらくなってしまう。だからジョーカーになる以前のアーサーの人生は"悲劇"だった。(泣いてるように笑うホアキン・フェニックスの演技が本当にすごい)

それが、ある事件がきっかけで、アーサーは偶然、大衆の怒りや不満を象徴するヒーローになる。彼は生まれて初めて自分の存在を認められたような気持ちになった。
ただ、それは彼の意図とは関係なく、人々が勝手に彼をアイコンとして見立てているにすぎなかった。アーサーもそれをわかっている。だから、彼にとってあの状況は最高のジョークなのだ。

ありのままの彼は、結局誰からも理解されないままだ。でも、彼と周囲のズレが悲劇→喜劇に変わる。それが、ジョーカーの誕生だった。

ジョーカーになっていく彼に共感することはまったくできなかった。でも、アーサーの悲しみや疎外感は見ていて本当に辛かった。辛いのに共感できないという、初めて感じる、なんとも言えない後味が残るすごい映画だった。

追記:
ジョーカーが階段で夕方の光を背中に浴びて踊るシーンがとても美しく、見とれてしまった。
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