しゅんまつもと

ボヘミアン・ラプソディのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.1
優れたポップソングというのは世の中の最大公約数になるものなのだと思う。「みんなのうた」でありつつ、これは「自分のうた」だと思うことのできるもの。例えば、学校のクラスの中心にいるやつにも、隅っこにいるやつにも同じように刺さるもの。
ここでいうポップというのは音楽的ジャンルのことではなく、精神性の話です。

この映画はそういった「ひとり」を見逃したりしない。LIVE AIDの大観衆を舐めるようなカメラーワークで上空から捉えるショットも、CGとは思えない存在感が確かにある。例えば、あまりの熱量に笑ってしまうセキュリティの顔や、肩を組み涙ぐむ親子、ライブを笑顔で見下ろす設営スタッフ、ライブを見つめる人間を景色に留めるなんてことは絶対にしないという精神に一番心を打たれた。だってそれはクイーンの音楽性とも必然的に一致するでしょ?

自分はクイーンの音楽は人並みに知ってる程度だから、史実の確かさやエピソードの掘り下げ方に関しては多くを語れないけど、フレディの人間性を持ち上げて賛美するような映画にはとても見えなかった。
「なりたい自分」になるために努力したりもがいたり失敗したりして、それでも最後には「本当の自分」でいることを選ぶのってとても真っ当なことだと思う。それが結実したラストにこそ胸打たれた。

ちょっと引っかかったのは、ピーターの扱いかなあ。たしかに良い奴とは言えないけど、ちょっとばかし救いがなさすぎるというか、彼も彼なりにフレディを想ってたのだと思うんだよね。結果的にはああいう形でしか守れなかったけど。

周りが騒ぎすぎると観に行く気をなくしてしまう捻くれ根性を叩き直して観にいってよかった。映画館で見てこその価値があると思う。