かつてヘミングウェイが暮らしたフロリダ州のキーウェストを中型キャンピングカーで目指す熟年夫婦の酸いも甘いも散りばめたロードムービーが名優二人の体当たりな芝居を通じて濃ゆく描かれる。目的地までの距離をひた走る単調な作品というよりは人生の道筋を逆行するように夫婦二人の表情が若返る逆接はモーション溢れる機微で紡ぎ出されていた。本編のダイナーで登場する冷たいハッピーシェイク飲みたい。
年齢を刻んだ夫婦が若者のライフを擬似体験するような快感がある。日常の病理をバカ真面目に投げ掛けてくるため不意を突かれた。高級ビジネスホテルで素泊まりの高額な宿泊費からフロントマンに愚痴を吐いたり老人ホームへ送り飛ばす"距離感ならではの破天荒ぶり"が笑いを生み出していた。夫婦のゆったりとした歩幅が寄せては戻り,戻っては離れる...熟年トラベラーの紆余曲折な道筋にじっくり身を委ねたくなるそんな現実思考で描き込まれた作品であった。
