櫻イミト

リュミエール!の櫻イミトのレビュー・感想・評価

リュミエール!(2016年製作の映画)
3.5
世界初の実写映画「工場の出口」(1895)を制作したフランスのリュミエール兄弟。彼らの全1422本の作品の中から108本を選び4Kで復元、体系的な解説でその功績を明らかにしていく。

※”シネマトグラフ”とは彼らの発明した世界初の動画撮影&スクリーン投影装置の名前で、1作品は最大50秒まで。

50秒×108本すべてに解説ナレーションが付いている。「工場の出口」や「ラ・シオタ駅への列車の到着」は単体では鑑賞済みだったが、本作を観て随分と印象が変わったのは解説のおかげ。作品の大半は人々を入れ込んだ風景をフィックスで撮影したもので、作品単体ではさほど面白くはないが、次々と連続して観ることで技術が熟していく過程がわかり面白い。本作と同じ手法で、写真集の作品を1枚50秒ずつ解説付きで観るのも面白いと思う。

構図論など映画の見方の基本が学べ(写真の見方に近い)、解説の言葉選びは映画レビューを書く上での参考になる。ただし物語論では無いことと、監督が無意識の部分まで称賛しているところは注意が必要。

※カメラと写真が普及し始めたのは1839年のダゲレオタイプ(銀板写真法)カメラの販売から。1844年に世界最古の写真集「自然の鉛筆」が出版された。シネマトグラフ発明の50年前から、実景をどう切り取るかの追及は始まっていた。
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