ゆみな

テルマのゆみなのレビュー・感想・評価

テルマ(2017年製作の映画)
4.0
抑圧された欲望が解放される


正直、この監督がラース・フォン・トリアーの親戚とかそういうのはどうでも良くて…って書こうと思ったら、前作『母の残像』を私は意外と好きだったらしく(レビュー見て確認した)、この監督と相性いいのかも!って思いました。不穏な空気が好きなんだろうな。

始まりから秀逸だった。
父親と幼い娘が雪原で狩りをしている。目の前の鹿を撃とうと父親は猟銃を構える。娘は鹿のその姿を凝視しているが、父親は鹿から娘の背中に照準を変える。結局、娘を撃つ事はなかったが…ここで既にこの不穏な空気にガッツリ巻き込まれている自分がいた。なぜ、父親は幼い娘を殺そうとしているのか…?で、オープニングタイトルの「THELMA」の点滅でしょ?これは一気に引き込まれるに決まってる。

テルマの両親は気持ち悪いくらいに過保護で、それが信仰からくる抑圧だと思っていたけど…それだけではなかった。彼女の過去が明らかになるにつれ、彼女自身も追い込まれていったんじゃないのかな…?好きで持った力ではない…でも止めるのことはできないし、更には恋をさる感情をコントロールできるはずもない。
愛するアンニャを消したしまったこと…過去に自分がしたことへの罪悪感に苦しみ、一度は父親の言うなりになるテルマだったけど、最終的に出した決断には心が震えたと言うかね。人体発火好きにはあのシーン堪らないし、自由になる為の強い意志を感じる素敵なシーンだったね(違うか)。結局はいつまでも自分を殺して生きていくことはできないと…。ただ、その現実が本物なのか…それとも彼女の願望が成せる物なのかは少し疑問が残ったり…。最後まで安心できない感じがやっぱり素晴らしかった。ハッピーエンドのようで…ハッピーエンドじゃないような。私はこの映画好きですね。
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